海賊から見た世界史 夜学会208
桃井治郎「海賊の世界史」を読み返した。西洋の覇権をもたらしたのは海軍力である。幾多の海戦を勝ち残ったの国々が現在の世界を動かす大国となっている。エンジンという動力が生まれる以前は水運が主だった。大きな荷物を運ぶのも大舞台を移動させるのも船が不可欠だった。その畝を動かした人々は造船技術と戦闘力を持った水軍だった。その水軍を動かす人々は、陸の帝国から「海賊」と呼ばれた。主に交易のために船を利用したが、場合によっては略奪も行った。ある歴史書にアレキサンダー大王と名もない海賊のやり取りが遺っている。「ある海賊が捕らえられ、アレキサンドロス大王の前に連れて来られた。大王が海賊に『海を荒らすのはどういうつもりか』と問うたとき、海賊はすこしも臆するところもなく、『陛下が世界を荒らすのと同じです。私は小さな船でするので盗賊とよばれ、陛下は大艦隊でなさるので、皇帝とよばれるだけです』と答えたのである」。だが、不思議なことに海賊から皇帝になった人物はまずいない。イギリスが例外かもしれない。9世紀、デンマークのデーン人が北西フランスにつくったのがノルマンジー公国だ。911年、シャルル3世によって領有を認められた。そのノルマンジーのギョーム2世が11世紀にブリテン島に侵攻し、イングランド国を破ってウイリアム1世としてイングランド国王になる。そもそもイングランドはユトランドの東の付け根にいたアングロサクソンが先住民のケルト人たちをけちらして支配した土地。「アングル人の土地」という意味である。1000年ほど前からイングランドのノルマン化が始まった経緯である。