日本が世界に先駆けて竣工した航空母艦
1947年5月1日、大阪市の日立造船桜島工場である航空母艦が解体された。艦艇名は「鳳翔」。浅野造船鶴見造船所で建造され、1922年12月27日に竣工した日本で最初の航空母艦だった。というより、世界で初めて竣工した航空母艦でもあった。
第二次大戦は日本海軍が大艦巨砲主義を捨てきれずに、航空戦力を軽視したため敗れたということが「定説」となっているが、筆者はずっとこのことを疑問に思っていた。調べていくうちに世界初の航空母艦は日本海軍が建造したことが分かった。
正確に言えば、「竣工」したのが世界初で、イギリスは1918年、小型空母「ハーミーズ」を起工していたが完 成に6年もかかったため、1919年12月に起工した「鳳翔」に追い抜かれてしまったのだった。それまでも欧米には空母はあったが、甲板に滑走路を設けた 艦船で航空母艦として設計されたものではなかった。
「鳳翔」は第二次大戦中は主に練習空母として使用されたため、終戦まで無傷で残存。戦後復員任務に従事した。日本で最初の空母が日本で最後まで生き残るという不思議な巡り合わせとなった。
飛行機を船の上で離発着させる航空母艦という発想はどこから出て来たのだろうか。数年前そんな議論をしたことがある。
「空母を世界で初めて実用化したのは、ひょっとしたら日本ではないか」
「ヨーロッパの主要国である英仏独は近い距離にあるため海の上から戦闘機や爆撃機を発進させる必要はあまりない。だから空母を必要としたのは太平洋で対峙した日米なのである」
実は最初に艦船の上から飛行機を飛ばしたのはアメリカだった。1910年、巡洋艦バーミンガムの仮設滑走台から陸上機の「離艦」に成功した。ライト兄弟 の初飛行からたった7年のことである。次いで1911年 巡洋艦ペンシルバニア後部の仮設甲板から「離着艦」に成功した。第一次大戦ではイギリスが 2000~1万トンクラスの商船を水上機母艦に改造し、数機でドイツを攻撃したことがある。日本海軍でも中国・青島沖に水上機を載せた若宮(5180ト ン)を派遣するなど海上から航空機を飛ばす試みはあった。
イギリスはハーミズとほぼ同時に空母イーグル(初代)を完成させたが、これはアルゼンチンの注文でイギリス建造していた戦艦を接収し、空母に再設計したもの。アメリカは給炭艦ジュピターを改造した空母ラングレイを建造した。
各国で軍事力としての航空母艦に対する認識はそうは高くなかった。アメリカが本格的に力を入れるのは1938年。日本との対戦に備えてエセックス級空母 の11隻(改良型を含めると24隻)の建造を急いだ。大戦時には米英と何ら遜色のない、艦隊型空母部隊を保有していた。そのことだけは知っておくべきであ る。決して航空戦を軽視していたのではない。(伴 武澄)
帝国海軍が建造した空母
鳳翔、赤城、加賀(赤城の同型艦「天城」が関東大震災で破損したため戦艦加賀を空母に改装)。
龍驤、蒼龍、飛龍。
翔鶴、瑞鶴。
大鳳、信濃。
雲龍型3隻(戦力化はできず)。
千歳型2隻(水上機母艦)、瑞鳳型2隻、龍鳳(いずれも潜水母艦)、伊吹(巡洋艦、未成) 。
飛鷹型2隻(大型で飛龍並みの攻撃力を持ち、ミッドウェイ後は主力として活躍)、他5隻 。