再び光が差し始めた豆満江開発
「豆満江開発」が再び動き始めた感がある。昨年来、北朝鮮の先鋒・羅津(羅先市)の名前が頻繁にニュースに登場するようになったからである。今日のニュースは日経新聞国際面「琿春-羅先間の橋・道路 中朝、整備へ協力」という見出しの記事だった。
中国吉林省の琿春市が、羅先市との間の橋梁の補修や道路建設で合意したという内容である。これまで輸出入を大連に依存していた吉林省にとって日本海へのアクセスは長年の夢。日本や韓国との時間距離を一気に短縮できることになる。
豆満江開発は約20年前、国連開発計画(UNDP)が北朝鮮・中国・ソ連の国境にまたがる流域を多国間で開発 しようと呼びかけた計画。資金、技術、労働力など各国が得意とする分野で貢献するユニークな構想だった。北朝鮮はこの計画に呼応する形で1991年11 月、豆満江流域の羅津、先鋒地区を開発区に指定し、外資導入のための法整備を行った。金日成の時代である。
当時、まだ金満だった日本は開発資金3兆円の提供に前向きの姿勢を見せていた。特に日本海側の自治体が日本海の対岸を新たなフロンティアとして見据え、「環日本海経済圏」という言葉も生まれた。
しかし、この壮大な開発計画は北朝鮮の”核開発疑惑”によってあっという間にしぼんでしまった。その後、政権を継承した金正日は、外資導入による社会的影響を考慮してか、豆満江開発はうたかたの夢として忘れ去られた。
羅津・先鋒(現在は羅先市)が再び注目されたのは、12月に金正日総書記が「初めて羅先市を視察してからだ。新年の4日には羅先市が特別市に指定された ことが発表され、その直後に金総書記の訪中に関するニュースも流れた。特別市の意味合いについては不明だが、北朝鮮が経済開発にあたって、父・金日成が手 掛けた羅津・先鋒開発に再び力を入れるのではないかと憶測されることとなった。
1992年から、北朝鮮が改革開放に舵を切っていれば、北東アジア情勢は様変わりしていただろうことは難くない。時を同じくして開発が始まった上海の浦 東地区を見れば歴然である。上海バンドの対岸の芦原が20年間で近代都市に変貌し、リニアモーターが新空港と都心をつなぐまでになっている。
筆者は浦東計画の10年前から始まっていた深圳など中国の4つの経済特区の発展ぶりを見てきただけに、浦東開発に対しても楽観的未来を想像してきた。
北朝鮮にとって、今回が最後のチャンスかもしれない。この20年間、北朝鮮もまた「うべかりし20年」を失ってきたのだと思っている。日本の数分の一 だった中国のGDPが世界第2位になり、インドを含めてBRICS諸国が台頭したたけでない。湾岸には世界一のビルとなったブルジュ・ハリファが完成し、 南アフリカではダッカー・ワールドカップが開催されるに到っているのである。このチャンスを逃せば、北朝鮮はアフリカにも抜かれる埋没国家に転落する可能 性だってある。
豆満江開発の再来は北東アジア全体のレベルアップにつながるだけでない。日本海岸の自治体が活性化することで、日本も新たなエンジンを持つことになる。(伴 武澄)
■(12/4)朝鮮新報、北朝鮮のデノミ実施を確認 「外貨も使用停止に」 【日本経済新聞】
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙、朝鮮新報(電子版)は12月4日付で、北朝鮮ウォンの旧通貨と新通貨を100対1の割合で交換するデノミ (通貨呼称単位の変更)を11月30日に実施したと報じた。朝鮮中央銀行(中央銀行)はデノミの目的をインフレ抑制と国家の経済管理強化にあると強調した という。「今後は商店や食堂で外貨を使用できなくなる」とも説明している。
北朝鮮系メディアがデノミを確認したのは初めて。同銀は「既に食堂などが新価格で正常営業し、絶対多数の勤労者が貨幣交換を支持、歓迎している」と自賛した。
だが、新旧の貨幣交換には「旧10万ウォン」という上限が設けられており、それ以上の旧貨幣を持っていた場合はすべてが無効になる。そのうえに外貨使用 も制限するとなれば、交換限度以上の資産を持っていた新興富裕層の不満を招くのは必至で、混乱も予想される。(ソウル=山口真典)
■金総書記、北東の経済特区を初視察 「貿易の拡大重要」 【日本経済新聞】
【ソウル=山口真典】北朝鮮の朝鮮中央放送は12月17日、金正日総書記がロシア・中国との境界周辺の羅先(ラソン、北東部)市を訪れ、水産物加工品などを扱う羅先大興貿易会社を現地指導したと報じた。具体的な日時は不明。ラヂオプレスが伝えた。
朝鮮通信(東京)によると1991年に同地域を経済自由貿易地帯に定めて以降、金総書記の訪問は初めて。金総書記は同地域を「重要な対外貿易基地」と位 置付け「対外貿易は絶えず拡大させるべき重要な事業だ」と強調。「対外貿易は信用第一主義の原則順守が極めて重要だ。輸出規律を守り商品の質を高める闘争 を強化すべきだ」と指示したという。
北朝鮮は国連開発計画(UNDP)が推進する羅先を含む豆満江(中国名・図們江)開発計画から脱退したと明らかになった。総書記の視察には、独自の開発継続と外資誘致をアピールする狙いがあるとみられる。
■羅先市を「特別市」に 北朝鮮、中央指導部が直轄 【日本経済新聞】
【ソウル=島谷英明】北朝鮮の朝鮮中央放送は1月5日、北東部の咸鏡北道でロシアとの境界に近い経済特区、羅先(ラソン)市を「特別市」に指定するとする最高人民会議常任委員会の4日付の政令を報じた。
ラヂオプレスによると、特別市は中央指導部の直轄市を意味し、北朝鮮では平壌市と羅先市の2つとなる。羅先市は1990年代前半に前身の羅津市が自由経済貿易地帯となり、特別市に指定された。その後2000年代に入って中央指導部の直轄から外れたとされていた。
北朝鮮メディアは昨年12月中旬、金正日総書記が羅先市を現地指導し、対外貿易発展のための指針を提示したと報じていた。