ソーシャルビジネスと社会起業

 新聞にソーシャルビジネスや社会起業的発想が掲載されるようになった。ソーシャルビジネスはバングラデシュのムハマド・ユヌス氏が数年前から同国で始めた救貧事業である。資本主義社会に利潤はつきものだが、見返りのない投資を求める運動を展開している。
 不思議なことに、そんなキテレツな発想に食い付く事業家がフランスにいたのである。ダノン・グループを率いるフランク・リブーである。バングラデシュに ユヌス氏のグラミン銀行と合弁でグラミン・ダノンを設立し、1個8円のヨーグルト「シャクティ」を売り出し、それが工場増設に到っているのだ。
 1月3日の日経新聞の企業面の企画記事「欧州発 新思想」ではそんな状況を驚きとともに紹介し、「従来型の企 業の社会貢献ではない。ダノンはシャクティを通じて最貧国での事業ノウハウを獲得し、新興国ビジネスに役立てる。さらに時がたてば、最貧国も新興国の仲間 入りをする」。
 同じ日経の5日投資欄のコラム「一目均衡」で小平龍四郎編集員が「社会起業」についてこう書いている。
「ダボス会議で知られる世界経済フォーラムは昨年来、社会起業をテーマに議論を交わしている。短期の収益を求める金融資本主義は自壊した。代替するパラダイムは何か。慈善とビジネスを両立させようとする社会企業家が、重要な役割を担うかもしれない、という問題意識だ」
「一昨年からの金融危機。資本市場を舞台にした活動を通じて何ができるかを。世界は問い直す。社会起業や慈善など、市場の外にあると思われた倫理への競うような接近は、そうした自問への答えの一つ。社会的責任投資も同じ文脈に置ける」
 20年以上も前のことである。三洋電機の井植敏社長が言っていたことが忘れられない。
「南ベトナムが”解放”される前、われわれはホーチミン郊外にラジオ工場を経営していた。革命後は政府に接収されたが、ドイモイが始まって再びベトナムに 行ってみるとその工場がしっかりと運営されていて驚いた、というより感動した。事業は資本のためにあるのではない。社会のためにあるのだということを深く 思い知らされた」
 そんな話だったと記憶している。なるほど大経営者は考えることが違うと感心したのだった。
 資本主義の代弁者だった日経新聞の記者たちが新たなパラダイムに着目していることは重要である。天国の賀川先生も喜んでいるに違いない。資本主義が曲がり角を迎えるこの時代に触覚のよさを発揮している。(伴 武澄)

伴武澄 について

新聞記者を定年退職後、高知市へ帰り、旧鏡村でシイタケとクレソンを栽培しながら、はりまや橋商店街で毎週金曜日に露天を商い、その夜に「夜学会」を開催するスーパーおじいさん。
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