日本でその存在がほとんど知られていない揚水発電所についての記事が2月26日の日経新聞朝刊に掲載されていた。電力が余っている夜間に下池から上池に汲み上げ、必要な時間帯に水を流して発電する仕組にである。

 兵庫県にある関西電力の奥多々良木発電所はなんと原発約2基分193万キロワットの発電能力を持つ。瀬戸内海に流れる市川の上流にあり、高低差が400メートルもあるため、普通の水力発電より高い効率で発電できるという。

 東電が、群馬・長野県境に建設中の神流川発電所はなんと6号機まで完成すると282万キロワットもの発電能力を持つというから驚きだ。  問題は汲み上げ時のエネルギー消費と発電エネルギーの間に損失が生じること。約70%しか再生できない。建設コストを加味すればとんでもない高い電力を 生産していることになるらしい。夜間と昼間とでは電力消費量は何倍にもなる。原発はいったん火を入れると出力の調整は難しい。このため、夜間の電力の「捨 て場」が不可欠だった。その捨て場の役割を担ってきたのが、揚水発電だった。そうした意味から電力会社は積極的のその存在を明らかにしてこなかった。

  現在、国内に24カ所の揚水発電所があり、原発並みの100万キロワットの能力を持つものが11カ所もある。もともと原発とペアで建設されたものだが、す でに存在する巨大な蓄電装置と考えれば優れたポテンシャルであるはずだ。これからの太陽光発電や風力発電が安定性を欠くものだとすれば、余っている時間帯 の電力を揚水発電所に貯めこむことも可能となる。 発想を逆転させて、つくりすぎの原発用のインフラが、貯めることができない自然エネルギーの蓄電池に活用できるのなら、これ幸いである。

順位発電所名水系所在地最大出力
1奥多々良木市川・円山川兵庫193.2万kw
2奥美濃木曽川岐阜150.0万kw
3新高瀬川信濃川長野128.0万kw
3大河内市川兵庫128.0万kw
5奥吉野新宮川奈良120.6万kw
6玉原利根川群馬120.0万kw
6俣野川旭川・日野川岡山・鳥取120.0万kw
8新豊根天竜川愛知112.5万kw
9今市利根川栃木105.0万kw
10下郷阿賀野川福島100.0万kw
10奥清津信濃川新潟100.0万kw
22奥只見阿賀野川福島56.0万kw
27田子倉阿賀野川福島39.5万kw