ダノンが支える貧困ビジネス
日経新聞1月9日のグローバルオピニオンの欄でフランスの食品大手ダノンのCEO、クランク・リブー氏が企業経営について興味深い話を紹介している。
「海外進出や新しい事業に乗り出すと株式会社から早期に果実を求められる。しかし事業会社は金融界からの圧力で仕事をしているわけではないことを丁寧に説明すべきだ。最貧国の一つ、バングラデシュでグラミン銀行の創設者のムハマド・ユヌス氏と合弁会社を設立して乳製品の販売を始めようとしたとき、ダノンの株主総会でこう話した。「利益はでないでしょう。もし利益がでたら再投資する。仕事が創造され、それが貧困をなくすことになる」。すると99%の株主が賛成してくれた。この事業は一年で軌道に乗った。」
ダノンの使命は「食品を通じてより多くの人に健康を届ける」ことだという。そして企業が存続するためには「環境対策、貧困解消など今の社会に求められることと合致する強い使命感を持ち続けること」が重要であるという。
昨今のグローバリズムとかなり違う企業理念を持っていることに驚いた。ダノンの株主も「利益追求」だけが投資目的でないのだ。バングラデシュの合弁事業はヨーグルトを製造し、それを10円足らずで販売している。すでに第二工場が立ち上がっている。ソーシャルビジネスが配当を行わない。社会事業として経営することで社会的価値が高まることに満足してもらおうというのだ。
ユヌス氏にいわせれば、世界中で貧困のために巨額の寄附が行われている。ソーシャルビジネスは配当はないが、元金は戻る。寄附は一回したらなくなってしまうが、ソーシャルビジネスはその資金を繰り返し投資できるため、「持続可能」なお金になるのだそうだ。
日本ではユヌス氏に呼びかけでファーストリテイリングがバングラで「100円Tシャツ」をつくるということが一年ほど前に報道されていた。バングラデシュのユヌス氏の下で、新しい「資本主義」の試みが行われている。