4月1日の消費税の導入で、一番敏感だったのは家庭の主婦でした。スーパーで買物をするたびに、代金に3%が上乗せられるのに疑問を感じたり、「もう1円玉はいや」と細かい釣り銭に反発する姿があちこちでみられました。消費税がそのまま価格に転嫁されることは仕方ないとしても、理髪、豆腐、飲食など先行値上げが目立つ品目も少なくなかっただけに、主婦の消費税に関する監視の目は強かったようです。
 この結果、物価の上昇率は4月の東京区部で、前年同月比2.6%の上昇にとどまりました。これをどう評価するかは意見の分かれるところですが、経済企画庁は、「消費税の転嫁はおおむね適正で、物価の基調は安定を続けている」との判断を示しています。ただ、中小の商店では、まだ消費税の転嫁を見送っているところも多くあり、必ずしも混乱が完全に静まったとは断言できません。このままの基調で、物価が推移することを期待したいものです。
 今回の消費税導入の国民の対応で感じたことがいくつかあります。まず、主婦が物価に関してかなり鈍感になっているということです。このことは都会の主婦に特徴的にいえることなのかもしれませんが、このところ主婦の会話に、「あそこのダイコンは安いといったやりとりがあまり聞こえてきません、家計が片しい苦しいという話は、いまも昔も変わりませんが、「値段が安い」という理由だけで、隣の商店街まで出向いて、買い物する光景は、あまり見られなくなっているようです。

 買い物に工夫を
 なぜこういう光景が少なくなってしまったのか考えてみますと、やはり、食費などを構成するエングル係数が格段に低くなって、高額消費が多くなっている事実が浮かび上がってきます。「毎日の買い物に神経ばかり使ってもあまり家計の足しにならない」ということなのでしょう。つまり、なんだかんだいっても生活のレベルが知らぬ間に上がっているということです。このことに気がつかすに、「苦しい苫しい」といっても外国の人たちからみれば、とてもおかしなことになります。
 こうなった理由の第一は、すでに述べましたように豊かさに起囚するものでしょうが、女性の社会進出が進んで、買い物に費やす時間が短くなっていることや、スーパーなど大型店舗の定着で、いくつもの商店を渡り歩かなくても買い物ができてしまうようになったことも影響していえるといえましょう。
 たしかに郊外の競争の少ないスーパーなどではかなり前から、「商品の価格が10円単位に
なっている」ところも出ており、こうした店舗の出現は、主婦が物価に鈍感になっていることにつけ込んだ商法といえるでしょう。
 先日、消費税の導入に当たって、百貨店、スーパー、小売店などで商品価格の調査をしたところ、びっくりしたのは、商品の価格が、店によって日によって、あまりに違うということでした。
 たとえばあるスーパーで、。3月に198円だった白砂糖(1キロ)が、4月には245円に上がり、5月はまた194円に戻っていました、百貨店でみると300円程度の商品です。また、電気店では300円で売っていたアルカリ電池(2本)が、スーパーで4月は185円、5月は278円と1カ月で5割以上も高くなっていました。
 メーカーの小売希望価格300円のチューブ人り歯磨きはスーパーでは168円、化粧品店ではこ188円と、じつに小売店の方が70%も安いのです『スーパーが必ずしも安いとは限りません。スーパーで719円で売っていた洗濯用粉洗剤(1.5キロ)が、ある薬局では688円、商品の価格はセールや目玉商品といった形で高くも安くもなるものなのです。こんなことを書くと、「そんなことはいかれなくとも知っている。男性は何も知らないんだから」とのお叱りを受けるかもしれませんが、店頭で見ていますと、主婦はけっこうこうした高い商品でも何げなく買い物かごに放り込んでいるのですね。消費税の3%もたしかに主婦の台所にとっては痛
い出費でしょうが、買い物にもう少し工夫があってもよいように思われ孝男
 主婦は店の体裁にとらわれることなく、「もっと賢くあってほしい」と思うのは筆者一人
ではないでしょう。価格の動向に厳しく目を光らせる必要がありそうです。
楽しみは倹約から
 そこで、家計簿を見直してみることを提案したいと思います。家計簿をつけたことのない人でしたら、手始めに、毎日の買い物の品目と価格だけでもノートに書き込むことをお勧めします。店によって安いものと高いものがあることが歴然とするでしょう。そして、1週間もすれば物価のだいたいの傾向が分かると思います
 店を選んで安いときに買う心がけに努力すれば、消費税3%はおろか、3%におつりがくることは請け合いです。主婦が商品価格に目を光らせれば、小売業者は店頭価格の表示に気を遣い始めます。そのことは、隣り合わせで価格競争を余儀なくされているスーパーの商品価格と、郊外に一軒だけある競争のないスーパーの価格を比較するだけで一目瞭然です。
 家計簿をつける狙いは、月づきや毎日のおカネの出人りを計り、収入に見合った支出をすることにあります。食費はいくら、学費はいくら、といったように家計を管理することはもちろん必要なこと。しかし、高額商品を購入するにしても休暇に旅行するにしても、その原資は毎日の倹約から生まれるということを忘れてはならないでしょう 大本の買い物の価格にもつと関心を持ってもらいたいということです。(Libre)  共同通信社 伴 武澄