デザインは福沢諭吉の方がいい。

日銀が11月26日発表した中間決算によると、9月末の総資産は690兆円、そのうち国債は10%増の529兆円、株主投資にあたるETFは24%増の34兆円となった。その結果、日本の株式市場の最大の株主となったのだそうだ。ちなみに日本のGDPは500兆円超。日銀の総資産がGDPを上回るなどということがあっていいのか。

その昔、日本の最大の株主は生保業界といわれた。1980年代後半、日本生命の幹部を取材したところ、「わが社にとって売買は買買」なのだと豪語していたことを思い出す。日銀も「買買」なのだ。一般株主が株式市場から逃避して長い年月が経つ。いつの間にか日本の株式市場を支えてきたのが生保業界から日銀に変わっていたことに驚きを隠せない。少なくとも生保業界は国民の生命保険の掛け金を投資したのである。日銀はそうではない。自らお金を創造する国家機関である。

日銀が一時的に株式市場を支えることがあってもおかしくない。しかし黒田総裁がやってきたことは継続的な市場介入なのだ。株式市場が低迷すればすかさず日銀が買いに回る。そんなことが常時起きるのなら、だれもが安心して株を購入できる。そんなものは市場でも何でもない。上がったり下がったりするのが市場の原理。その市場原理を否定するのなら市場はいらない。まさに日銀は資本主義を否定しているに等しい。

日銀の最大の機能は金融市場の調節である。景気が悪い時には金利を下げて借金をしやすくする。景気が過熱しているときは逆に金利を上げる。ここ8年の日銀に役割はお金の過剰な供給だった。アベノミクスとは日銀の資金供給でしかなかった。市場で使えないほどの資金を金融機関に供給する。でも金融機関はどこもお金を貸すことはない。担保のない企業に貸すことは内からだ。大手企業はすでにお金がじゃぶじゃぶで借りることはない。中小企業には貸さないということになれば、日銀が供給した巨額の資金はどこにいくのか。結果的に国債と株主に向かう。これがアベノミクスの真相なのだ。

生保業界が最大株主だったころ、資金の5%以上は株式に投資できなかった。そんな制限があった。しかし、日銀にはそんな制限もない。日本の株式市場はコロナ禍で経済が停滞しているにも関わらず高値を更新している。少なくとも2016年から始めた年間6兆円の投資は不必要である。いますぐ中止を宣言すべきであろう。