先週、日銀は17年ぶりにマイナス金利解除を宣言した。金利を上げることで円安を阻止したかったのに、市場は逆の反応を示した。1ドル=140円台だった円ドル相場は150円台を突破してしまった。日銀は日々の銀行間取引の金利である「無担保コールレート」を0から0.1%にするとした、一方で長期国債の買い入れを継続すると発表したのだ。金利を上げると宣言すると言いながら、金融緩和は続けると宣言した。矛盾した政策を発表したのだから当然だ。これ以上の円安が続くと国内物価上昇に悪影響を与えることは誰にでも分かる。だからマイナス金利解除を宣言したのだ。でも金利が今後上昇すると財政がもたなくなる。国債金利が2%、3%と上昇すればどうなるのか。これまで通りの放漫財政が続けられなくなる。そんな日銀の矛盾に満ちた政策に対して、投機筋は円売りに動いたのである。市場はマイナス金利解除などを信頼していない。日本はこれまで通り、金融緩和を続けるのだと判断している。

 本来、金利が上がれば株価は下がるというのが市場の常識。なのに日本の株価は上昇を続けている。日銀はこれまで「デフレ脱却」のため、金利を引き下げ、ゼロ金利政策を続けた。ゼロ金利にしてもデフレからの脱却は出来ず、市場に金をばらまく「緩和策」を導入した。緩和策とは簡単に言えば、市場にある国債を日銀が買い占めるということ。結果的に何が起きたかといえば、ゼロ金利ならば、どれだけでも国債を発行できるという市場原理を逸脱した経済構造を生み出してしまった。アベノミクスとはまさにそんな市場原理を逸脱した経済構造だったのである。

 市場では1ドル=200円の声まで出ている。そんな円安になってもおかしくない状況が生まれている。円安によって物価高が加速すれば、賃金が上昇しても国民生活は逼迫する。物価高に良いも悪いもない。日銀が本気で金利上昇を認めなければ、日本経済は本当に崩壊する。株高に酔っている場合ではないのだ。

この円安に対して、財務省と金融庁、日銀は3会合を開いて、「あらゆる手段を排除しない」とし、為替介入を匂わしている。だが、円高に対する介入とは違い、円高への対応は難しい。ドル売りするにはそれなりのドルを保有していなければならない。これまで、どこの国でも通貨安への対応で成功した例はないからだ。