これまで原付免許が必要だったキックボードが7月1日から無免許で運転できるようになった。16歳以上とはなっているが、ヘルメットもいらない。警察庁は電動自転車すら認めなかったのに、この緩和策はなんだろうと考えている。フランスではあまりに多くの事故があるため、レンタルは禁止する方向らしい。周回遅れの緩和策はなにやら水道民営化に似ているような気がしてならない。水道民営化の場合は、バックに最強のフランス・ヴェオリア社の存在があったのだが、キックボードの場合、日本に強い圧力をかけるような強い企業はないはずだ。

僕はキックボードの無免許運転を認めるぐらいなら、まず電動自転車を認めるべきだと思っている。高齢者や障がい者向けのシニアカーは道交法上、歩行者の分類で、時速6キロ以下しか出ないようにリミッターがかかっている。数年前、輸入シニアカーを購入して舗道の走行をテストしたことがある。タイヤがゴム製でサイズが小さいため、路面のデコボコがもろに伝わるのと、高知市では舗道の舗装状態がひどいため、危険極まりないことが分かった。自転車はタイヤに空気が入っているため、ある程度、デコボコを吸収できるが、キックボードのタイヤはシニアカートほとんど変わらず振動を吸収できない。制限時速が20キロに制限されているが、電動自転車よりずっと危険度が高いと思われる。

今回の道交法改正でキックボードは特定小型原動機付自転車と名付けられた。萬晩報では法律に「特定」という概念がついた時は疑った方がいいとこれまでも指摘してきた。警察庁によれば、特定小型原動機付自転車とは「原動機付自転車のうち車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものであり、かつ、その運転に関し高い技能を要しないものである車として道路交通法施行規則で定める基準に該当するものをいいます」とある。そして車体の大きさは長さ:190センチ以下、幅60センチ以下でモーターの定格出力が0.60キロワット以下で、時速20キロをこえないことなどが規定されている。

試しに僕のアシスト自転車のサイズを測ってみたところ、この規格内だった。ということは電動自転車も20キロ以内の速度のものなら無免許で走れるということになる。実際、「自転車型の特定小型原付」と名打った電動自転車のい販売も始まっている。京都の会社の『MOBI-BIKE EXCEED TKG Ver』は価格が10万円を切っている。警察庁の思惑とは裏腹に、数年内に「電動アシスト自転車」などは市場から駆逐されてしまうのではないかと思う。

電動アシスト自転車が販売されたのは80年代後半。販売していた三洋電機の担当者が語っていた言葉を思い出す。「この自転車、本当は自走できるんですが、警察庁がうるさいのでペダルをこがないとパワーが出ない仕組みにしてあるのです」。中国でEVが発達したきっかけは電動自転車だった。それが電動バイクとなり、田舎の四輪貨物車になり、今のEVに発展した。過去20年で充電して車両に乗ることにほとんど抵抗感がなくなっているのが中国なのだ。日本経済再生には発想の転換が不可欠だったのに、行政の無理解で新しい技術が育たなかった。