かつては先進国首脳会議、現在は主要国首脳会議(G7サミット)が19日から広島市で開かれている。事務局はなく、議長国は持ち回りで、今回は日本である。最大の議題はウクライナ侵攻に対する西側の結束であろう。軍事支援ができない日本がロシアに対する支援策を取りまとめるというのだから大きな矛盾がある。

サミットは1975年にジスカールデスタン。フランス大統領の呼びかけで米英仏独日5カ国がランブイエに集まった。73年のオイルショックによって経済の根幹を揺さぶられた西側諸国が一致協力する目的で始まり、後にイタリアとカナダが加わってG7となった。戦後経済を牽引してきたアメリカ経済は60年代から続くベトナム戦争で力を落とす一方で、コメコン陣営ではオイルショックの影響はほどんどなかった。ソ連を中心に核や宇宙戦略など先端技術でアメリカに拮抗する勢いにあった。その15年後に、ソ連が自壊するなど当時は想像もできなかった。G7首脳には、このままでは東側の優位性が西側のそれを上回ってしまうのではないかという危機感があったといって過言でない。

英語でサミットは頂上会談を指し、トップ会談という意味合いがあるが、75年以降はサミットといえば、G7サミットを指すことになる。それほど大きな転換期だった。特に日本にとっては「主要国」の仲間入りを認められる大きな意味合いがあった。これによって75年以降は、世界の主要課題を議論する場となった。冷戦終了後の94年からロシアもこのグループに参加し、G8となったが、クルミア併合後は招かれていない。西側対ソ連という70年代、80年代の構図に戻っているといっていい。

広島サミットは49年目のサミットとなり、ほぼ50年にわたる歴史的開催となる。特に被爆地広島に首脳が集結することで核問題も主要議題となるが、ウクライナによる反攻が予想される中で、「戦争遂行」に対する首脳同士のやりとりに世界の視線が集まることになる。かつてのサミットは経済問題に特化していた。だからこそ日本が発言する意味があった。ところがこのところのサミットは安全保障会議の様相を示している。ここらが問題だ。