吉田太郎「コロナ後の食と農」(築地書館)を読んだ。選挙公約に「オーガニックな学校給食を」を掲げた。その後、高知県でも有機給食議員連盟を発足させる動きも出ている。僕は有機農業についてはど素人だが、「コロナ後の食と農」を読むかぎり、高知県での有機農業の取り組みはとんでもなく遅れていることに気付く。

ヨーロッパではフランスやデンマークが有機給食の先進地とされ、日本では、千葉県いすみ市、羽咋市、今治市が先駆け役となってきたとされる。それぞれ20年、30年の歴史を持ち、既得権益と闘ってきた経緯がある。

有機農業や有機給食といって反対を唱える市民はいないだろう。問題は有機栽培の作物はコストが高い上に、つくっても市場がないことである。市場で取引される有機野菜はまだまだ限定的であることから、これまで普及が遅れていた。ヨーロッパで始まった有機栽培の普及はどこでも公的食堂、つまり役所食堂や学校給食から始まっているのだ。行政が計画的に需要を創出することによって、供給側の有機栽培農家にやる気を起こさせているということなのだ。

興味あるのはデンマークでの取り組みだ。料理店で使用される有機食材を示す指標としてゴールド、シルバー、ブロンズからなる三段階のラベルを1999年から国が設けている。2016年現在、1800のレストランがこのラベルを持っている。2016年だけで50%も増えた。2020年の目標は三倍の6000件である。1800のうち、公共食堂が1300以上を占める。デンマークは2011年、学校や保育園、病院などの公共食堂の食材の60%を2020年までに有機にするという目標が建てられているからだ。

同国は2015年、有機農産物の供給量を増やすために2020年までに2007年比で生産面積を倍増させる野心的アクションプランを発表、多くの公的資金が投入されている。特にすごいのは首都コペンハーゲン。2016年現在、公的食堂の88%で有機農産物が使われている。有機農産物は酪農製品、豚肉、穀物、飼料と広範囲である上、近隣諸国への輸出も伸びる一方、他国からの輸入においても有機が拡大しているそうなのだ。つまりデンマークの有機農産物政策が他国の有機農産物消費や栽培の拡大に役立っているということなのだ。