安倍元首相の再任から約10年、日銀総裁に黒田東彦氏が登用され、金融の異次元緩和が始まった。消費者物価を2%に高めてデフレ経済から脱却することを目指した。金利をゼロに維持するだけでなく、市場からの国債買い取りを開始した。その結果、500兆円を超える国債が日銀の保有となった。1000兆円あった国の借金の半分がなくなったに等しい。国債をいくら発行しても日銀が買ってくれるので、財政の規律はこれまでになく緩んだ。

ここ、一年、欧米で物価上昇を抑えるため、中央銀行が相次いで利上げし、その結果、日本円売られ、1ドル=150円を超える水準に達した。日本経済は物価上昇だけでなく、円安の加速により輸入物価の上昇に見舞われている。にもかかわらず、黒田日銀は金融引き締めを決断できなかった。

ところが、日銀は19、20日の金融政策決定会合で突如、実質利上げを決め、発表した。黒田日銀が市場に降参したというのが実情だと考える。秋口から国債発行にあたって、入札不成立が相次ぎ、日銀は12月には発行した国債をその日のうちに買い取らざるを得なくなった。事実上の日銀による国債買い入れとなった。国債買い入れは財政法上「禁じられている」はずなのだ。

日銀買い入れ禁止は、第二次大戦時、戦費調達のため政府が行ったもので、戦後の超インフレにつながったことから、財政法で禁止された。

アベノミクスは三つの矢からなる。第一は異次元の金融緩和策。第二は財政出動だ。日銀による国債の大量買い入れが、国債の大量発行を可能にした。大量買い入れなしに、ゼロ金利の国債発行は不可能であることは誰にでも分かること。

日銀の政策転換により、これから金利上昇が始まる。金利上昇が始まれば、打ち出の小づちのように国債発行を続けることはできなくなる。

金利が戻れば、日本経済は復活するというのが僕の20年來の持論だった。ようやく日本経済も普通に戻ると期待したい。