防衛費2倍増の財源を巡って、岸田内閣が示した法人税、復興特別税、たばこ税による原案は自民党税調の議論で根幹から組み換えを余儀なくされ、増税の実施時期も決められずに終わった。高市経済安保相はツイッターで「真意が理解できない」とかみつき、「間違ったことは言っていない。 罷免 されるのであれば、それはそれで仕方ない」と開き直った。官邸の意向に造反する自民党議員が多数出現したことによって、岸田内閣の今後の政権運営に暗雲が垂れこんでいる象徴となっている。安倍元首相の時代にはありえなかった事態が自民党内に起き始めているといっていい。

増税の骨格はほとんど変わっていないが、自民党税調で決まったのは、復興特別税の税額の枠を維持したまま、一部を所得税増税に振り替えてまかなうという案。増税の時期を明示しない増税案は国会の審議に耐えうるかどうかも疑わしい。自民党税調がこれほどもめるのは珍しい現象だ。防衛費2%を掲げる勢力はそもそも国債を財源と考えていた。そもそも増税を掲げた政権が長くもったためしはない。

ちなみにたばこ税は90年代から増税が続いているが、税率を上げても喫煙者の減少によって、税収額の増加はほとんどない。税務に関わる人ならだれでも知っている事実だ。本当に財源として考えているか疑わしい。

今後、一定の財政規律が必要だと考える宏池会と安倍首相の意思を受け継ぐ強硬派との軋轢が予想され、岸田首相は自民党内の調整で苦しい立場に立たされることは確実。