ヘボンのことを学んでいる。和英辞書「和英語林集成」を編纂し、その時のローマ字表記がその後、「ヘボン式ローマ字」として日本に定着した。しかし、その辞書は外国人が日本語を学ぶ単なる和英辞典ではなかった。英和辞典も併用していたのだった。幕末に発行した初版本はすでに2万語以上を収納していた。1冊18両もしたにかかわらず、人気となり数年で売り切った。幕府の学問書が300冊購入したという記録まである。その後、2版、3版と版を重ね、語彙は3万5000を超えた。最後は版権を丸善に売却し、その資金で明治学院にヘボン館を建設した。

望月洋子「ヘボンの生涯と日本語」(新潮選書)によると、日本の近代化によって、次々と新しい日本語の語彙が作り出され、ヘボンの辞書に盛り込まれていった。版の語彙の変化によって、そのようすが分かるという。第2版の序に「最近の政府の革命、政治的社会的大へんかと、西洋の科学・文学・制度の導入が原因で、日本語は学問の各分野に重要な語を増やし続けている」と書いている。望月氏は同書で次のような語彙の変化を記述している。

種痘、消化、心理、伝導
貧院、病院(中国から)
ポストカード→葉書(はがき)、郵便差出箱(駅逓司書状集箱)
テレグラフ→電信
フォトグラフィー→写真
カメラ→写真鏡
マイクロスコープ→顕微鏡
テレスコープ→望遠鏡(三版)←遠眼鏡
エクスチェンギ→為替、カワセカタ→銀行
銀行(中国語)
安息日→日曜→月曜から土曜日
堂→会堂、教会堂→教会
三版から←聖書、精霊、宣教師、天国、福音
ツワモノ、サムライ→兵隊