利用されない公共交通
野村総研が実施したローカル線沿線住民1万人に対するアンケートで、「公共交通を維持すべきだ」としたのは72%。一方で「ほぼ利用しない」が75%と対照的な結果が出た。誰もが必要としている公共交通であるのに、誰も利用しないのはなぜか。たぶん便数が少なく不便である上に運賃が高いからだろう。国鉄の民営化から30年以上経つが、問題は収益力がある都市部と過疎地の路線の対比である。国営鉄道なら赤字路線であろうと維持することができるが、民営企業となればそうはいかない。株主から利益を求められる。その結果、多くの路線が廃止もしくは自治体との第三セクターに移行した。
日経新聞が4日から連載している「ローカル線はどこへ」という連載で、JR西日本が運営する芸備線をレポート。2019年、1キロ当たりの平均乗客はたった11人。100円を稼ぐのに2万5000円のコストがかかるという。東城駅から広島方面行の列車は1日3本しかない。一部の報道ではローカル線を維持するには現行の運賃を6割値上げしなければ経営が成り立たなくなるという。
5日の連載では、由利高原鉄道の例を挙げている。通学定期の料金を反駁に下げると、乗客の半数を占める高校生の利用が8割増えたという。20年以上前に、西鉄バスが初乗り180円を100円に引き下げると乗客は8割増えた。公共交通の問題の一つは運賃の値上げだったことは分かり切っているのに、運賃値上げと利用者減のいたちごっこは止まらない。
高知県でも運賃が高い路線はほとんど乗客がいない。公共交通は自治体だけの問題ではない。住民が積極的に利用できるような運行や運賃を模索しなければならない。バスにしろ鉄道にしろ、いったん廃止した路線を復活するのはほとんど不可能だ。