青年海外協力隊高知県OB会

 はりまや橋商店街にWaterBaseが誕生してちょうど3年になる。当初は1年の約束で契約した。3年を超えてここに住みつけるとな思わなかった。天からの恵みの場だと思わざるを得ない。

 4階建てビルの1階、100平米を超える広いスペース。自分の自由になる空間をつくる。わくわくした。自宅に自伐製材した杉板が大量にあり、まずこれで頑丈なテーブルを二つつくった。商店街の山本さんから寄贈を受けた家具椅子も10脚あった。これで人が集える。そう商店街に集いの場を作りたかったのだ。これまでテント広場で開催していた夜学会も天候に煩わせられることなく開くことが出来る。

 問題は広いスペースの壁だった。かつて陶器店で、壁からすべての陳列棚が外されていたから、コンクリートむき出しの無残な姿をみせていた。これをどうするか考えた。全面、杉板を張りたかったが、広すぎて杉板が足りるはずもない。ホームセンターに出向くとすぐ石膏ボードが目についた。1枚300円。安い。薄黄色の紙が貼ってあって、杉板と色が調和する。これだと決めた。だが、貼り方や切断の仕方が分からない。ネットで調べると懇切丁寧な作業工程がユーチューブに出ていた。便利なもんだ。困難はほとんどネットにその解決方法が示されているのだ。これなら自力でできると確信した。10枚、3000円強。10メートルにわたる壁面が石膏ボードで完成した。

 床面は100平米以上あり、これは集いの場にしても広すぎる。今度は間仕切りが必要となった。これは余りの杉板で足りるだろう。幅10センチほどの杉板を数十枚張ることにした。枠組みを天井から床に取り付ける作業は難しそうだった。とにかくコンクリートに木ねじを打ったことがないし、その道具もない。たまたま同じ商店街で作業中の大工さんが助っ人となってくれた。あっという間に頑丈な枠組みを完成させてくれた。後は杉板を張る作業だけだった。ほぼ1週間で商店街の集いの場が完成した。何とも言えない充実感があった。間仕切りの裏側は物置兼大工作業場となった。

 集いの場をWaterBaseと名付けた。長男が高知時代に「竜馬ベース」なるスペースを運営していた。そのBaseを使わせてもらった。数カ月前の市議選で水道の民営化に反対するスローガンを掲げていたことからWaterも使った。真っ黒いベニヤ板にパソコンから好きな文字を投影して、ピンクの白墨でWaterBaseと書いた。我ながら自分のセンスの良さに驚いた。

 集いの場には手作りバックロードホーンのスピーカーシステムと購入したばかりの真空管アンプ、そして40年来使用しているLuxmanのレコードプレイヤーを設置した。自宅では鳴らすことにできない大音量がここでは出せる。狭い自宅で力を持て余していたステレオシステムが本領を発揮できるようになった。ジャズの音源は1000曲以上ある。楽しみがまた一つ増えた。

 WaterBaseのこけら落としは10月の第一土曜日だった。友人の紹介で落語家が来てくれた。自宅で余っていた畳を一枚持ち込んで「高座」をつくって落語家をお迎えした。商店街から借りた70人の椅子は満席になった。それから3年。WaterBaseは商店街の顔となり、人の出入りが絶えない。夜学会は充実し、ライブは月1回以上開催される。多くの出会いが生まれた。