安倍政権で黒田東彦氏が日銀総裁に就任して以来、日銀は異次元の金融緩和と称してマーケットをかく乱し続けて来た。就任以来、10年近くを経てもなお目標の2%の物価上昇を果たせなかったが、ここへ来てその物価が2%に達しようとしている。ガソリンや電力などエネルギー価格、そして食料品の物価上昇によって、消費者の実感は2%程度の上昇ではないだろう。28日の金融政策決定会合では金融緩和を続けることを決めた。それだけではい。指値オペを毎日実施し無制限に国債を買い入れる。その結果、円ドル相場は一時131円を超えた。日銀は円安より「景気」を選択したといっていい。世界の趨勢に反してなんとしてもゼロ金利を維持する考えなのだ。円相場が130円の危機水準を下回ってもまだ政策転換ができない日銀。過去の失敗を率直に認めなければ、市場から見捨てられる日も遠くない。

 BBCによると、世界銀行は26日、ウクライナでの戦争が1970年代以来で「最大の商品市場ショック」を引き起こすと警告した。この日発表した商品市場見通しによると、紛争による混乱は天然ガスから小麦、綿花に至るさまざまな製品で大幅な価格上昇をもたらすという。世銀の上級エコノミストで、報告書の共同執筆者のピーター・ネーグル氏はBBCの取材に対し、価格上昇は「非常に大きな経済的・人道的影響を及ぼし始めている」と語った。「世界中の家計が、生活費の危機を感じている」
 世銀は、エネルギー価格が50%超上昇し、家庭や企業の光熱費が押し上げられるとみている。最も値上がりするのは欧州の天然ガス価格で、コストは2倍以上になると見込み。来年と2024年には値下がりが予測されているが、それでも2021年より15%高い水準にとどまるという。2020年4月の安値から今年3月の高値まで値上がりは、中東地域の緊張で原油価格が高騰した1973年以来、「23カ月間で最大のエネルギー価格の上昇」だと、世銀は説明している。
 今回の商品見通しで世銀は、多くの食品価格が急上昇すると警告している。国連の食料価格指数はすでに、60年前の記録開始以来、最高値を記録している。中でも小麦は42.7%上昇し、ドル換算で過去最高を記録するとみられている。そのほか、大麦は33.3%、大豆は20%、油脂は29.8%、鶏肉は41.8%の上昇を見込んでいる。こうした値上がりは、ウクライナやロシアからの輸出激減を受けたものだ。米投資JPモルガンによると、戦争前の両国は世界の小麦輸出の28.9%を占めていた。また、格付けのS&Pグローバルによると、多くの加工食品の主要原料ヒマワリの世界供給の60%を占めていたという。
 世銀のネーグル氏は、他の国々は中期的には、ウクライナの戦争による供給不足を解決することができると述べた。しかし、今年の肥料価格が69%上昇すると予測されていることから、「農家が肥料の使用量を減らし始め、農業の収穫が減少するリスクは、現実的なものだ」と指摘した。