19日、岸田内閣は55兆円におよぶコロナ対策の支出を閣議決定した。当初予算の半分にあたる金額を内閣成立2週間で「まとめあげた」のだからすごい。そもそも衆院選では数十兆円といっていたものがいつの間にか倍増している。どこでだれがこんなでたらめな予算を編成したのだろうか、疑問だらけである。それより17日、日本の円は一時114円97銭をつけ、4年8カ月ぶり円安ドル高水準となった。17日の日経新聞によると、「円の総合的な実力を示す実質実効為替レート(消費者物価を加味した為替レート)が約50年前の低水準に近づいている」と危機感に警鐘を鳴らしている。国際決済銀行(BIS)が公表した10月の数値は68.71となり、1972年並み(67台)の低さで、日本の物価上昇率が30年間ほぼ横ばいしてきたことに加え、輸出競争力を重視して円安につながるような政策を進めたことが要因だとしている。かつてとは経済構造が変わり、もはや円安は成長力の底上げに寄与していない。

安倍政権は2%の消費者物価を達成するために、金融緩和を推し進め通貨発行量を増大させてきた。日銀の黒田総裁が進めてきたもので、結果的に円安が進行、円建て利益が向上し株式市場の上昇につながった。目的だった物価上昇は10年近くたっても一向に進まなかった。それどころか、このところの円安では株式が売られる傾向が強まり、輸入価格の上昇により企業物価は高騰。「悪い円安」という評価さえ定着しつつある。もはや政府は安倍政権による金融政策の変更が求められている。黒田バスーカ砲は失敗だったのである。これから不況下における物価高上昇に警戒感を高めなければならない。通貨や金融だけではない。脱炭素に向けた大規模な政策転換も求められている。岸田内閣は、もはやコロナ対策ばかりにかまけている場合ではなさそうだ。

1998-03-26 昨夜の10兆円が朝方12兆円、夕方に16兆円となった