日本で普通に暮らしているとたぶん分からないことが少なくない。日本の円は1ドル=110円内外で取引されているが、最近の日経新聞によると、物価変動を加味した為替水準はそんなもんではないらしい。ニクソンショックが起きた50年前の1ドル=300円程度まで下落しているというのだ。民主党政権下で、日本円は1ドル=100円だったから、世界的に日本円を鳥瞰すれば、当時の3分の1にまで下落したと考えていい。この30年間、日本経済の成長はほぼストップしている。だから日本のGDPは物価変動を加味した為替で5兆ドルから実質「1.6兆ドル」にまで縮小したということなのだ。

右のグラフは中国と日本のGDPをドルベースで比較した推移だ。2010年に逆転されて10年、中国のGDPは日本のそれの3倍以上になっている。

安倍政権のアベノミクスは、結果的に日銀による大量の国債と株式購入によって円安誘導を行った。日本企業の業績は円安によって大きく膨れ上がり、株高をもたらしたことは事実だが、それは単に見かけ上の話でしかない。

ニューヨークダウ平均は1990年に2633ドルだったものが2021年には3万5360ドル。なんど13.4倍となっているのに対して、日本の日経平均は1998年12月の3万9000円だった。このところようやく3万前後まで上昇しているが、まだ、ピーク時の75%。この格差をどう説明すればいいのか、とまどうばかりである。

確かに日本企業の業績はこのところ好調で利益水準も過去最高を更新するところが少なくない。だが、売り上げを伸ばし利益の貢献しているのは海外部門である。国内生産は大して伸びているわけではない。もちろん海外で稼いだ利益を国内に持ち帰れば「潤う」ことは間違いないが、その利益は国内の労働者に還元されているわけではない。配当は確実に増えているが、大部分は社内留保として貯め込まれている。

現実に1990年に777万台あった自動車の国内販売は2020年には459万台と40%も減少している。新規住宅着工数で見ると、1998年に160万件あったものが2010年には半分の80万件を切っておりその後も80万と90万件の間を行き来している。(萬晩報主宰 伴武澄)