米中対立構造の行方 夜学会167
日時:8月28日(金)午後7時から
場所:はりまや橋商店街Water Base
今のアメリカと中国の対立構造を理解するキーワードがいくつかある。まずは東西対立。そして東側の分裂。この構造はいつか見てきた歴史とオーバーラップする。そう、1930年代のアジア太平洋をめぐる日米の対立構造である。東洋の日本という国家の存在感が第一次大戦以降、急速に大きくなった。特に中国市場をめぐっては既得権益を持っていたヨーロッパ勢が劣勢となる中で日米が権益を拡大した。対立の激化は日本の陸軍の暴走とアメリカ側の挑発によって臨界点を超えてしまった。
国家が台頭する時期に起きるのは自らの「過信」であり、対立する側への「憎悪」である。僕の中で、習近平の一帯一路構想は大東亜共栄圏の発想と生き写しとなっている。ともに生存権の拡大を目指している。周りの国や相手国からみると暴走気味に映る。自らの生存権の拡大は周辺国にとっては当然ながら逆に死活問題となる。
アメリカ側から見ると、30年来の中国は戦前の日本の動きと重なるはずだ。当時の日本は皇国史観に固まっており、現在の中国は共産党思想に固まっている。90年代の中国はなんとか国際社会との協調が不可欠だった。江沢民時代、反日教育を復活させるなど強硬姿勢を崩さなかったが、欧米諸国とは友好を重視した。アメリカにとってもまだ中国は脅威の対象ではなかった。
2010年を境に中国のGDPは日本を追い越し、中国は空母を保有するまで海軍力を強化した。南シナ海をめぐる領有権問題で、軍事拠点の建設を進めて支配を強化した。
アメリカからみると、経済的にも軍事的にも強大なライバルが登場したことになる。しかも民主主義という自らの陣営の理念を共有しない共産主義国家である。
アメリカは戦前、ABCD包囲網を形成して国際的貿易から日本を排除しようとした。「挑発」である。戦後、東京裁判の裁判官として唯一、日本の無罪を主張したインドのパール判事は「必ずしも侵略戦争ではなかった」と断定した。戦争の引き金として日本包囲網の存在があったとしている。
トランプ政権になってから、アメリカは対中貿易を不公正なものとして圧力を加え続けている。ハイテク技術は80年代の原油輸出にあたるかもしれない。台頭する中国の勢力拡大にとどめを刺そうとしているようにしか映らない。
南シナ海で中国が4発のミサイルを撃ち込んだ。これは何を意味するのか。日本人としてよく考えなければならない。「挑発」に対する「報復」なのか、偶発であるはずがない。中国にすれば、香港問題も台湾問題も主権にかかわる問題。民主派、独立派が台頭するのは背後にアメリカがあると考えるはずである。いずれにせよ、戦争でとばっちりを受けるのは周辺国である。われわれはアメリカの中国に対する挑発に軽々に乗ってはならない。それは香港や台湾も同じだろう。