3月20日(金)の夜学会
テーマ:背景に21世紀の黄禍論
講師:伴武澄
時間:午後7時から
場所:WaterBase

 Aeraに、姜尚中が「新型コロナウイルスによる『黄禍論』のトラップに惑わされるな」と題してコラムを書いていた。新型コロナウイルス問題で、普通のインフルエンザよりずっと感染力が劣るのになぜ新型に対して多くの人たちがおびえるのか考えてきた。いまのところたどり着いたのは、「黄禍論」という発想だ。
 20年以上前にアメリカのハンティントンが書いた「文明の衝突」という本が話題を呼んだ。内容は冷戦後に西洋とイスラムが対立するという論調だったと思う。
黄禍論は100年も以上前にドイツのウイルヘルム二世が提唱した考え。中国人社会が地球規模で移住を開始し、安価な労働力で西洋社会に挑戦し始めたことに危機感を提唱したものだが、その後、明治日本が急速に力をつけて西洋社会が進出していたアジアやカリフォルニアに影響力を拡大したことによっても欧米で黄禍論が広がった。
 日本はついにアメリカと衝突し、完膚なきまで叩き潰されたが、戦後の経済成長によって再び「世界」の混乱要因とされた。
 1990年代の金融危機によって、世界的に突出していた日本経済はようやく「世界」にとって脅威でなくなったが、次に現れたのは共産中国だった。
そもそも共産主義は理念的に「世界」にとって違和感そのものでしかないのに、30年以上にわたる高度成長によってアメリカやEUと伍す存在となってきた。文明の衝突では衝突の相手文明を見間違ったのである。「世界」にとって最も危惧すべき状態とは何か。日中韓を中心とした経済ブロックが政治経済の主導権を握ることにほかならない。
新型コロナウイルスが怖いのは「理解できない異質なもの」だからだということもできる。昔はやったエイズウイルスやエボラ出血熱がそうだった。感染力が怖いのだったら、世界はこんなに騒ぐ必要はないはずである。「世界」が一番恐れているのは「新しい秩序」の確立なのだと思う。西暦前後、西のローマ帝国に対して東に漢帝国があり、真ん中にペルシャがそれぞれ独自の文明圏を形成していた。これからのグローバル社会を牽引する文明はアジアに移るのか、そんな戦いがこれから始まると確信している。