10月初旬、東京の財団法人霞山会を訪れた時、「李徳全」という本を見つけて借りてきた。中国にこんな女性が存在していたことすら知らなかったことに恥じ入った。

 李徳全はモンゴル族の貧しい家に育ち、クリスチャン・ジェネラルとして共産党側についた軍閥、馮玉祥に嫁いだ。中華人民共和国成立後、衛生部長(大臣)に就任、紅十字総会会長を兼任した。李徳全が日本にとって重要な役割を果たしたのは、戦後初の中国代表団を率いて訪日し、戦犯とされた1000人前後の日本人を 無事帰国させた点である。

 戦後の日本と中国の関係はLT貿易、廖承志と高碕達之助の協力から始まったと思っていたが、「李徳全」のおかげで、そのLT貿易の始まる前に李徳全の大きな貢献があったことを初めて知った。

 この書籍は石川好監修のもと、程麻、林振江の二人の中国人によって書かれた。いわば日中合作といってよい。