トロイカによって、民営化が強いられたもう一つの国はアイルランドだ。37の自治体にあった水道事業は一つに統合するよう指示され、政府は「アイルランド・ウォーター・カンパニー」を設立した。同社は住民の家の敷地外に水道メーターを設置し始めた。

 ヨーロッパの人々は、欧州連合(EU)と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)をトロイカと呼んでいる。  コーク市で一人の若い女性が、路上でメーター設置に抵抗したことをきっかけに、同社への反対運動が広がった。

 2014年11月にはダブリンで13万人(総人口の4%)が新しい水道料金制への反対デモに参加した。アイルランドには水道メーターはなく、水道供給は一般財源で行われていたのです。その結果、アイルランドはOECD諸国の中で唯一、水の貧困のない国であることを誇っていたのだった。

 そもそも、水道民営化は債務返済軽減の代償として突き付けられたものだった。しかし、73%の国民が新たな水道料金システムでの支払いを拒否し、水道企業の運営は失敗した。

 しかし、政府は水道の民営化を断念したわけではなく、メーター設置に反対する国民の運動は続いている。(「最後の一滴から」、文責:伴武澄)

アイルランド・ウォーター https://en.wikipedia.org/wiki/Irish_Water