パリ市の水道サービスは1985年から民間企業であるヴェオリア社とスエズ社によって担われてきた。前副市長のアンヌ・ル・ストラ氏は「長年の経験の結果、私たちはサービスの管理能力を失ってきたことにきづいたのです。財政的な透明性も欠如していました。だから私たちは水道サービスの管理権を取り戻す決断をしたのです」と語る。ストラ氏は2月に来日時に「水道料金は1985年から2008年までに174%上がりました。施設更新など必要な投資ならよいですが、情報公開が不十分で公営化後の調査では、7%と報告されていた営業利益は、実際には15-20%であり差額がどのように使われたかがわかっていない」と語っていた。ヴェオリア社員のJ.トゥリは、同社のやり方を公に告発し、追われたものの潔白が証明され再雇用された。彼はヴェオリアのデータ改ざんや、不正な資金の流れを告発したのだった。

 こうした問題から、パリ市の水道は2010年に再公営化し、オードパリ社という公営企業が担うようになった。同社は100%公営で、市が管理し、株主は存在せず、独自の予算を持った半独立の法人だ。オードパリは公営企業として5つの流域、12の県、300自治体とパートナーシップを結んでいる。地下水マネジメントや水源の保全、さらには生物多様性、持続可能な農業、地域連携、持続可能な地域開発、環境型社会、地産地消など、長期的な水保全と水質改善に取り組んでいる。地域連携、地方自治体、農業セクター、NGOとの連携も進んでいて、国際的にも高い評価を得ている。(ドキュメンタリー映画「最後の一滴まで」から。文責:伴武澄)