高知市庁舎に入居しているフランス企業
高知市上下水道局のお客様センターは、2011年1月からフランスの水大手、ヴェオリア社日本法人の子会社ヴェオリア・ジェネッツ社に業務委託されている。 9年目に入るが、ほとんどの高知市民はこのことを知らない。ヴェオリアは2002年に日本法人を設立し、相次いで水関連の日本企業が買収した。その中に各地で水道料金徴収業務を請け負っていたジェネッツ社もあった。いつの間にかジェネッツ社がフランス企業の傘下に入っていたのだから、分からなくて当然だ。
ジェネッツ社が社名にヴェオリアを冠したのは2015年。いまでは174カ所で水道料金徴収業務を行っている。ほとんどの都市にヴェオリアが浸透していることになる。日本法人の社員は3000人弱だから、すでに大企業である。料金徴収以外にも、広島県広島市下水道局(2006年)、 埼玉県下水道公社の下水処理場(2006年)、松山市公営企業局の浄水場(2012年)、浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)(2018年)の運営を任されている。
高知市で奇怪なのは、ヴェオリア・ジェネッツ高知営業所の住所が、高知市上下水道局と同じなことである。民間企業が市役所の庁舎に営業所を置いているのだ。営業所だから、会計事務や採用などの要員も市役所の中で業務をこなしている。こんなことは高知市以外ではまず許されないだろう。
上下水道局は賃貸料を取っているというものの、年間180万円(光熱費込み)というから、高知市内でもかなり安い部類に入る。安いどころではない。概算で光熱費が月額10万円とすると、50人ほどの事務スペースの賃貸料は月5万円ということになる。これは法外といっていい。しかもこのことは高知市上下水道局とヴェオリア・ジェネッツ社との契約書に盛り込まれている。
お客様センター業務の外部委託は市役所の業務効率化の議論の中から生まれ、プロポーザル方式によって、3社が入札し、5年間11億円の金額でジェネッツ社(当時)が落札した。この金額の妥当性は素人には分からないが、年間9000万円の経費削減になると説明された。2014年に高知市の上水道と下水道が統合され、2016年からは13億1000万円で契約が更新された。
今のところ、高知市は水道の民営化はしない考え。昨年12月の市議会で、上下水道事業管理者が明言しているから間違いない。ヴェオリア社から、料金徴収業務以外のプロポーザルもないという。「高知みたいな小さい都市に来るはずがない」との説明もしている。水の民営化が議論される中で行われた12月議会でのやりとりは一切、報道されていない。僕が現役記者だったら、「高知市、民営化にノー」と書いただろう。