2年前、愛国心をあおる首相が日本に誕生した。ここ10年、日韓、日中間にお互いをそしる風潮が高まっている。愛国心が危ないのは、「愛国心は非常 に揮発性の高いもので引火しやすく、必ずそれをあおる人々が生まれる」と書いたのは司馬遼太郎だった。愛国心をあおる首相を抱く日本は日々危うい国になり つつある。
 賀川豊彦はかつて「愛国心では足りない」という内容のコラムを世界連邦運動の機関誌「世界国家」に書いている。第一次大戦に従軍し、ドイツ兵に銃殺刑に処 されたカベル(Edith Cavell)という看護婦がいた。戦場でドイツ兵をも平等に看護したため、ドイツ側にスパイと疑われたのである。カベルが銃口の前に立った時に言ったのが 「愛国心だけでは足りない」という一言だった。
 ロンドンの大英美術館の東側に銅像がたっているから、多くのイギリス人はカベルの精神を理解していると思う。