日経新聞の私の履歴書の8月は東大寺長老の森本公誠さんだった。今日はその最終回にふさわしい宗教者の一言があった。
 アフガニスタン東北部で、50年ほど前に発見されたギリシャ都市遺跡の碑文があるそうだ。その筆者はギリシャの哲学者クレアルコスが紀元前275年ごろ、ギリシャのデルフォイにあった神殿の箴言を書き写してはるばるアフガニスタンの地にもたらしたものなのだそうだ。アレキサンダー大王がインドまで遠征して、ギリシャ文明をインダスにまでもたらしたことは歴史でならったが、ギリシャの箴言まで残していたとは知らなかった。
その箴言や訳すと次のようになるのだそうだ。
 「少年のときには良き態度を学び、青年のときには感情を制御することを学び、中年には正義を学び、老年になっては良き助言者となることを学ぶ。そして悔いなく死ぬ」
 森本さんはただの仏教者ではない、京都大学で学んだ時代にイスラムに傾倒し、エジプトでも学んだ碩学なのだ。アラビア語を解する日本でもまれな世界的宗教学者でもある。この一カ月、森本さんの履歴書を読んで圧倒されるものがあった。そして、さすがは天下の東大寺なのだということを学ばされた。
 この一文も「良き助言者」にならんとして紹介させてもらった。