29日の民主党の代表選挙で野田佳彦氏が代表に選ばれた。前原誠司氏はもっと党内の支持があるものだと思っていたから筆者にとっては意外な結果だった。
 代表選をずっと中継でみていて思わずメモをとったのは、野田氏が当選した後に述べた挨拶だった。冒頭に「もうノーサイドにしましょう」「政治は坂道の雪だるまを押し上げる作業」「坂の上に押し上げて政権交代をしてよかったと思えるようにしたい」。
 民主党という政党がここまで追い詰められていたのかという印象が強かった。
 海江田万里氏が選ばれたら、民主党は終わりだと思っていたから、ベターな選択だと思う。以前に書いたように野田氏は完璧に財務官僚に取り込まれているが、逆に考えれば財務官僚の支援を得られるということで「安定感」はあるのかもしれない。また民主党を一本化するという点では民主党にとって一番いい選択 だったはずだ。
 しかし野田さんがいかに人格者であっても突破力は期待できない。脱官僚という民主党のマニフェストからすれば違和感のある選択肢だった。
 いまの日本経済の問題は、民が雇用や賃金の面で苦境に陥っているのに、官は大してリストラもなく、天下りのための予算を臆面もなく計上しているというこ となのである。経産省の古賀茂明『日本中枢の崩壊』(講談社)によれば、日本が現在抱える問題の多くが霞ヶ関に起因するということになる。
 そもそも「政治主導」などいう言葉はあってはならない。民主主義国家では本来当たり前の話なのだ。「官僚主導」となっていることがおかしい政治情勢なの だとのだ。古賀氏によれば、民主党は政権を奪取した時点からすでに官僚に取り込まれていたという。仙石由人氏に期待したが古賀氏が関与した公務員制度改革 は民主党になって、さらに骨抜きを許してしまった。
 筆者自身、記者の現場から離れてしまってあまり偉そうなことはいえないが、なるほど官僚の巧みさはそれほどのものなのかと思わされた。改革派の現役官僚が言うのだからうそはないはずだ。