8月26日、小沢一郎氏が来月の民主党代表選への出馬を表明した。テレビのニュース速報を見ていて耳を疑った。党内でどんな争いがあったのか分からないが、筆者は小沢氏の立候補はないと高をくくっていた。
 小沢氏の立候補は民主党の分裂、そして連立による自民党の政権復帰を連想させる。そこでほくそ笑むのは霞が関官僚である。16年前のそんな情景を一瞬思い浮かべた有権者も少なくないと思う。
 日本のこの20年の無為無策はもちろん自民党の責任だと思っているが、改革に対して徹底的に抵抗してきた霞が関官僚の存在はとてつもなく大きい。小泉純一郎元首相が目指し、民主党が継承した政策の大きな柱は「脱官僚」だったのだと今でも信じている。メガトン級の官僚の厚い壁を突破しなければこの国の未来はない。
 幕末の坂本竜馬もまた幕藩体制からの脱却なくして日本はないと考え、犬猿の仲だった薩摩と長州を一つにした。NHKの「龍馬伝」でも今週末は薩長連合がテーマとなっている。奇しくも先週、4-6月期のGDPが中国に抜かれたというニュースが世界を駆け巡った。アジアにおける日本の役割が大きく変質した瞬間だった。民主党が政権をとって1年、そんな歴史的分水嶺を感じていた矢先に日本を元の木阿弥に戻そうとしている政治的決断が行われたことにやり場のない深い思いに沈んでいる。
 いま菅だ、小沢だと争っている場合でないのに!
 国を憂う親しい友人と電話で話したことである。菅直人首相に胆力があれば、解散総選挙に踏み切るしかない。小泉氏が5年前、郵政解散を断行したように菅首相が解散総選挙を行えば、もう一度、民主党に風が吹くかも知れないのだ。いま日本を救うのは民主党分裂をなんとか回避することである。政権を握って2、3回、予算編成を行えば霞が関官僚の体質を変えることができるはずだ。有権者はそこまでのがまんが必要である。
 細川護熙内閣がたった1年で瓦解して、自民党・官僚政権に戻った轍を二度と踏んではならない。
 一国を束ねる首相には時には強い意思を国民に示す義務がある。それは民主党代表選ではない。今一度、菅直人なのか小沢一郎なのか国民に問う決断である。たった1年前ではあるが、有権者は自民党に「ノー」を突きつけたのではなかったのか。
 菅直人首相に直ちに解散総選挙の決断を求める次第である。(伴 武澄)