6月からの高速道路無料化区間が2月2日発表された。当初から高速道路のうち東名など幹線や首都高などは対象外とされていたが、あまりにも小規模で末端の路線ばかりなので落胆させられた。
 高速道路無料化は民主党のかねてからの主張だったが、政権獲得後の世論調査では、世論の評価はあまりかんばしくない。反対の理由は「環境」と「渋滞」である。
 もともと高速道路の建設は借金に依存していた。昭和30年代の名神や東名は世銀など海外からの借款が充てられた。税金はおろか日本のお金でもなかったのだ。通行量で借金を支払い、完済した時点で無料化するはずのものだった。つまり当面の建設資金が回らないので借金=有料でスタートしたのである。
 「当時は天下の公道を走るのになぜお金が必要なのか」との不満もあったが、国民は我慢した。そもそも論である。
 東名は名神はもっと早い時点で無料化されてよかったのだが、高速道路を全国に張り巡らせるためにさらに建設資金が必要とされ「プール方式」といって全国の高速道路建設が終了して借金を完済するまでは有料を続けることになった。
 高速道路の建設資金の償還期間は50年とされているので、多くの国民は無料化となる前にこの世を去ることになる。これでは利用者はたまったものではない。
 反対理由の渋滞について、言いたい。そもそも首都圏の終末は50キロ以上の渋滞は当たり前のこと。いったん高速に乗ると渋滞となっても高速を乗り降りすると通行料がかさむのでドライバーは「じっと我慢の子」を決め込むことになる。30分で通り抜けることができる区間を5時間も6時間も我慢すること事態が尋常でない。JRの特急が一定時間遅れると特急料金が還付されるのに、高速道路では一切そうしたサービスがない。
 無料化されてたとえ渋滞が増えたなら、利用者は躊躇なく一般道路に降りるだろうし、そもそも、料金所の存在が渋滞の大きな原因となっているのだ。
 それから環境である。これには二つの問題が提起されている。無料化されると利用者が鉄道やバスなどの代替交通を利用しなくなるためにガソリンの使用量が増えて排ガスも増えるという考え方である。もう一つは渋滞による排ガス排出量の増加である。
 前者には一理ある。しかし大都市以外のところではすでにマイカー通勤が当たり前になっていて、公共交通機関の存続すらが危うくなっているのである。乗用車の利用でいえば、大都市圏の週末の利用が多少増えても劇的に環境が悪化するとは考えられない。大都市に住む筆者自身にとって、そもそも週末の大渋滞が堪えられないので10年以上もマイカーで遠出したことがない。たとえ高速道路が無料になっても週末に遠出することはないだろう。
 もう一つの渋滞による排ガス排出量の増加は、大都市周辺で想定されている事態であるが、そもそも週末はすでに渋滞が続いているから、これ以上の渋滞はありえないと考える。
 高速道路は、「高速」に意味がある。これまで料金が高いために一般道を使うケースはあまりに多かった。せっかく巨額の資金を投資して建設したものが、高い利用料のために利用されないのだとしたら何のためにつくったのか分からない。車の通行量が増えるのを危惧するのなら、そもそも道路建設は一切やめた方がいい。一般道のバイパス道の建設では渋滞や環境がほとんど問題とされないのに、なぜ高速道路だけが問題視されるのかも分からない。
 最後に「私は車を持っていないから高速道路無料化は反対」という人がけっこういる。自分は運転しなくても、家族がするかもしれない。あなたが乗っているバスが走る一般道の建設や補習には高速道路以上の税金が投入されているのですよ。(伴武澄)
 高速無料化、37路線50区間 開始は6月と国交相【共同通信2010年02月02日】
 前原誠司国土交通相は2日、全国の高速道路のうち北海道・道央自動車道の士別剣淵―岩見沢(延長139キロ)など37路線50区間を2010年度、実験的に無料化すると発表した。交通量の少ない地方路線が中心。自動料金収受システム(ETC)の利用や車種にかかわらず、すべての車が対象となる。開始時期について前原氏は「6月からの予定」と述べた。期間は11年3月末まで。
 高速道路の無料化は、民主党が09年の衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた目玉施策の一つで、流通コストの引き下げや地域・経済の活性化が狙い。10年度の予算は1千億円で、対象区間の総延長は1626キロ。対象外の首都高速と阪神高速を除き、供用中の高速道路の約18%に当たる。
 ETC利用の乗用車と二輪車に限って地方圏の休日(土日祝日)の通行料を上限千円とした大幅割引で、渋滞があまり起きなかった路線を中心に選んだ。秋田、山形、島根、高知、大分、宮崎の各県では高速道路の多くが、沖縄県では全線が無料になる。