死に体、麻生太郎内閣の行方はサラリーマンの夜の酒席の格好の肴なのだと思う。
 6月5日、自民党は最後の頼みの静岡県知事選でも敗北してしまった。麻生首相として一番屈辱的なのはこのまま麻生降ろしの声がさらに高まって退陣を余儀なくされることであろう。
 ではどうすればいいか。一番ダメージの少ない選択肢は何なのだろう。それは直ちに総辞職して、民主党に政権を禅譲するということである。これをお勧めする最大の理由は当の民主党にとって想定外の行動だからである。
 世の中、麻生首相が退陣しても自民党が次の人を担ぎ、総選挙は次期首相が行うものと信じているはずである。民主党、まして鳩山由紀夫氏の頭の中に「自らが解散を行う」となどという選択肢があろうはずがない。
 民主党が政権を掌握すれば、自民と民主の立場が逆転する。まず第一に、会期末を控えて自ら解散に打って出るか、満期まで待って総選挙を行うか自分で判断せざるを得なくなる。第二に、8月末には来年度予算概算要求が締め切られる。シーリングも自ら行わなければならなくなる。あいまいな財源論は与党となった民主党にはもはや許されない。公約としてきた公務員制度改革が初年度から挫折する可能性だってある。まさか自民党が組んだ予算をそのまま通すなどはしないと思うが、霞が関を侮ってはいけない。
 つまり政権を担当したその日から守勢に回らざるをえなくなるということなのである。
 内閣総辞職に閣僚の一部が反対したらどうなるか。閣僚全員が辞表を提出しなければならない? そうではない。過去に辞表を提出しなかった例もないわけではない。首相の辞意は総辞職と同意義なのだそうだ。どうせ解散はできないのだし、総辞職に追い込まれるぐらいなら、民主党を困らせる辞め方をお考えになったらいい。
 断っておくが、筆者は自民党支持でも民主党支持でもない。政権交代ができる政治制度を望む一人の市民である。(伴 武澄)