警察庁に後部座席シートベルトの問題で「なぜ路線バスにシートベルトがなくて、路線バスはシートベルトを締める必要がないのか」と質問をしたところ、丁寧な返事がきた。
 律義であることだけは確かだが、内容は想像していた通り「保安基準」、つまり車検の問題だった。
 【質問】6月1日から車の後部座席のシートベルト着用が義務付けられました。バス も適用ということのようですが、普通の路線バスにはシートベルトがありません。路線バスが適用外ならば、理由を教えてください。また立ち席の場合はどういうことになるのですか。
 【返答】警察庁ホームページにアクセスいただきありがとうございます。 伴様からのメールを拝見しました。後部座席のシートベルト着用義務については、元々シートベルトの装備がない状態で保安基準を満たし、車検に合格している 車両であれば適用除外となります。お尋ねの路線バスについても同様です。また、乗客が定員内である場合は、シートベルトの数が足りなくても適用されませ ん。
 警察庁では、国民の皆様の声を反映させ、国民の立場に立った警察活動を推進してまいりますので、今後ともご理解とご協力をいただきますようよろしくお願いいたします。警察庁広報室
 簡単にいうと、車検の路線バスの検査項目に「運転席以外にシートベルト設置を求めていない」ということ。車検で設置を求めていないから、道交法上でもシートベルトを締める必要がないというのだ。
 一見、理路整然としているようだが、そもそもシートベルトが必要になったのは、重大事故を減らすためではないのか。車検の検査項目の有無とは関係ないはずなのだ。
 シートベルトの着用は重大事故を減らすためだったはず。保安基準で「シートベルトの装備の義務づけがないから、シートベルトを締めなくていい、というのでは本末転倒である。
 路線バスにシートベルトを義務付けるとどうなるか。まず通勤時にバス停に取り残される乗客が多数現れるだろう。シートベルトは座席にしか取り付けられないから、座席数しか乗せられなくなるからだ。
 バスも電車もそうだが、「立ち席」などという矛盾した表現がずっと昔からなんの疑問もなく使われている。「席」は「座席」の「席」だろうから日本語としても矛盾が大きすぎる。そして、立ち席を含めて「定員」などが定められている。これってやっぱりおかしい。
 飛行機で立ち席などはあり得ない。定員は座席の数と決まっている。離発着時にはシートベルトの着用が義務付けられ、立ち上がることさえ禁止されている。そりゃそうだ。飛行機は超高速で飛ぶから危険極まりない。だれもが納得して規則に従っているのだ。
 しかし、よく考えてみれば、陸上には飛行機並みのスピードで走る物体があるのだ。そう新幹線。時速300キロ以上のスピードで走る。不思議なことにこの 新幹線でシートベルトを締めろという話はまったくない。壮大な矛盾ではないだろうか。しかも「立ち席」まであり、盆暮れの混雑時には「定員の200%」な どということが何の疑問もなくニュースで報道されている。
 道交法で重箱の隅をつつくような規制が次々と生まれる中で、国交省は300キロ以上で走る新幹線のシートベルトはおろか、立ち席を許した上で定員までオーバーさせて平然としている。
 後部座席シートベルトは、明日からはいよいよ高速道路で実際の検挙が始まる。この国に役人は本当に国民の命を大切にしようとしているのか、疑問でならない。