法相の諮問機関・法制審議会の民法成年年齢部会(部会長=鎌田薫・早稲田大教授)は29日、明治以来、20歳と定められてきた民法上の成年年齢を18歳に引き下げることが適当とする最終報告書をまとめた。選挙権を持つ年齢も18歳に引き下げられることが前提。引き下げで生じる恐れがある消費者被害への対策の充実などを条件とし、法改正の時期の判断は国会に委ねた。
 実は9年前から選挙権を18歳に引き下げるべきだと活動してきたNPOがある。特定非営利活動法人Rights(菅源太郎代表理事)である。7年前にRghtsが主催したシンポジウムに参加したことがあり、その時、主要国で参政権がまだ20歳以上なのは日本だけだということを知らされ、萬晩報に「気が付いてみれば選挙権20歳は日本だけ」というコラムを書いた。
 http://www.yorozubp.com/0211/021120.htm
 シンポジウムで驚いたのはオーストラリアからの青年の発言だった。同国で参政権が18歳に引き下げられたのはベトナム戦争時で、その理由として「ベトナム戦争のため徴兵が始まり、参政権もないのに徴兵するのはおかしい」という議論が起きた結果だったと話していた。アメリカでも同じことが起きていたそうだ。
 当時、日本では市町村合併の議論が盛んで、その是非を住民投票にかける市町村も少なくなかった。住民投票条例を決める際に、投票権を18歳にまで引き下げる自治体もあり、長野県平谷村議会では中学生にまで拡大すると決議した。2001年にはアメリカのペンシルベニア州で18歳の町長が誕生したという話題もあった。
 日本では1925年に普通選挙法が施行されたが、参政権は男性だけだった。女性にも拡大し年齢が20歳以上となったのは戦後まもなくのことである。それ以降、日本では「成年」の概念についてほとんど議論らしきものがなかった。60年間知的怠慢が続いていたことになる。
 選挙権18歳の国 アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、中国、その他ヨーロッパ
 選挙権20歳の国 日本、韓国、台湾
 選挙権17歳の国 北朝鮮
 選挙権16歳の国 ブラジル、キューバ
 今回、法制審の報告が突然出てきたという印象をもつ人もあるかもしれないが、2007年5月に成立した「日本国憲法の改正手続に関する法律」(通称:国民投票法)は来年5月18日から施行される。その国民投票法附則3条で「年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう…必要な措置を講ずる」と規定しており、参政権に関してはすでに18歳は織り込み済みなのである。(伴武澄)