賀川豊彦献身100年を記念して賀川豊彦のベストセラー『死線を越えて』が4月7日、PHP研究所から復刻される。復刻版には哲学者、山折哲雄氏が「復刻に寄せて」を寄稿、大正時代の大ベストセラーがいま甦ります。献身100年プロジェクトではすでにこの出版を告知しており、発売と同時に品切れとなる恐れもあります。ぜひお近くの書店で早めのご予約を。
 賀川豊彦『死線を越えて』PHP研究所 定価:本体1,500円(税別)
 【帯裏】賀川がスラム街に入ったころは、日本資本主義の勃興期にあたっていた。第一次世界大戦で戦時景気が訪れ、戦時成金が続出した。それにたいして労働者は劣悪な状況におかれ、社会保障もいきわたってはいなかった。貧富の差ははなはだしく、貧民階層の不満が世の中を覆っていた。そのような時代に、スラム街における愛と献身の物語が文字どおり彗星のように登場したのだといっていいだろう。キリスト教のヒューマニズムが多くの人びとの心を惹きつけ、たちまち広い層に浸透していったのである。その当時の社会状況が今日の日本の姿に重なって映らないであろうか。アメリカにはじまる世界的な金融恐慌がわが国をも直撃し、昨年は、格差社会のひずみが随所に噴きだして小林多喜二の小説『蟹工船』がブームとなった。そしてその『蟹工船』が発表される九年前に、賀川の『死線を越えて』がすでに世に出ていたことを思い返すとき、今回の復刊の試みがあらためて時代の動きにうながされたものであることを痛感するのである」――(「復刻版に寄せて」より)