来年2009年は賀川豊彦が神戸の葺合新川のスラムに入って救貧活動を始めて100年となります。賀川ゆかりの神戸と東京で賀川豊彦献身100年記念事業実行委員会がつくられ、筆者は国際平和協会のかかわりから1月、広報委員長に任命されました。
 日本と世界に平和のメッセージを投げかけ続けた賀川の実践と思想を21世紀に蘇らせることを目的とした多くのプロジェクトを準備中です。
 広報委員会はこれまで、いまなぜ賀川豊彦なのかという命題を考えてきました。鳴門市賀川豊彦記念館の田辺健二館長が徳島新聞に「21世紀のグランドデザイナー」と題して連載記事を掲載しました。これは大きなヒントとなりました。
 低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題や原油に代表される資源や穀物の価格高騰など投機で世界経済はいま危機に立たされています。社 会主義が崩壊して約20年、資本主義の暴走が始まった感があります。80年前の世界恐慌に直面して賀川が提唱したのが協同組合的経営です。当時、賀川が英 文で出版した『Brotherhood Economics』は十数カ国語に翻訳され、経済の第三の道として世界的に注目されました。
 資本主義は20世紀、世界に多くの富をもたらしたことは確かですが、過剰な投機資金が人々の基礎的生活権を犯し始めているいま、経済のあり方がもう一度 問われているような気がします。資本主義の暴走を食い止める第三の道の模索です。賀川の提唱した協同組合的思想のリバイバルが求められているのかもしれま せん。
 そういった意味合いで「21世紀のグランドデザイナー」という表現はいまなぜ賀川なのかと問われたときの回答としてぴったりです。同時に、賀川主義のリ バイバルには行動や実践が伴わなければなりません。賀川イズムが実践の哲学、思想だったことを思い出さなければなりません。
 賀川だったらどう考えただろうか、どう行動しただろうか。来年の献身100年記念事業を展開するとき、常に議論していきたいと思います。これを「Think Kagawa」と題してはどうでしょうか。
 実行委員会は考え、議論しながらこれから記念事業を一つひとつ作り上げていきます。参加団体はもちろんです。一人でも多くの人に賀川豊彦の実像を伝えていくのが広報委員会の仕事だと考えています。(伴武澄)