白熱電球が数年後には日本から消えるかもしれない。共同通信社が18日、独自ニュースとして配信した記事によると「電力消費が大きくエネルギー利用効率が悪いことから、国内での製造・販売を数年以内に中止する方針を打ち出す見通しとなった」。
 エジソンが白熱電球を発明したのが、1879年だから、それから130年である。すでにオーストラリアが廃止の方向性をうちだしている。家庭の電力消費からみれば、電球が最大の消費源であろう。60W、100Wなど個々の消費電力は大きくはないが、数が多い。季節によるが半分近くになる時期もあるはずだ。
 白熱電球の製造・販売中止は環境問題に端を発する。蛍光灯という代替製品もあるから日常生活には困らないだろうが、政府が「禁止」という姿勢にはおもしろくないものがある。消費者が自ら選択をするのは自由だし、メーカーが製造を中止するのもけっこうだ。
 政府がもっと関心を持つべきは、「禁止」条項を増やすことではなく、太陽光発電や風力発電など石油代替エネルギー普及を励ますような政策に前向きに取り組むことではないかと思う。デンマークは1980年代から国を挙げて風力発電を奨励、いまでは消費電力の10%以上を風力で賄うほどになっている。ドイツも自然エネルギーの高価買い取りを電力会社に義務付けて久しい。結果、世界最大の太陽光発電設置国にのし上がった。日本で実用化した太陽電池がいまやドイツを象徴する環境政策のひとつとなっているのである。
 経産省は、戦後日本の産業を支えてきた中枢だった。90年代から業界育成から消費者保護に軸足を移したはずだった。白熱電球の禁止もよいが、同時に電力源についても自然エネルギー重視策を打ち出してほしかった。(紫竹庵人)