租税特別措置法で2倍払わされているガソリン税
2007年12月11日 証券経済倶楽部

道路特定財源から54年 「貧困からの脱出」
暫定税率から34年 「オイルショック」=「34年の当分の間が44年になるのだ」
みんな歴史の彼方にある理由
臨時で始まり、緊急となり、暫定が続いている。

■7日、政府・与党は「道路特定財源」について合意した。
①租特を10年維持。暫定これまで5年が最長→10年(改革は大幅後退)
②10年間の道路事業規模を59兆円(国交省要求は65兆円=現在6.5兆円×10年)
③一般財源は1800億円

■課題 民主党の出方 3月31日に租特が廃止となる。ただちに減税。
           暫定税率の引き下げと一般財源化

 道路特定財源の見直しに関する基本方針 (平成17年12月9日 政府・与党)
 特定財源のあり方について、納税者の理解を得て、抜本的な見直しを行うことが喫緊の課題となっている。
 簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(抄)(平成18年6月2日公布)
 特定財源制度に係る税の収入額については、一般財源化を図ることを前提とし、平成十九年度以降の歳出及び歳入の在り方に関する検討と併せて、納税者の理解を得つつ、具体的な改正の案を作成するものとする。
 道路特定財源の見直しに関する具体策 (平成18年12月8日閣議決定)
 19年中に、今後の具体的な道路整備の姿を示した中期的な計画を作成する。
 道路整備に充てることを義務付けている現在の仕組みはこれを改めることとし、20年の通常国会において所要の法改正を行う。
 また、毎年度の予算において、道路歳出を上回る税収は一般財源とする。
 2006年11月に塩崎恭久官房長官はいったんは「本丸」ともいえる揮発油税も含めた一般財源化を表明

道路特定財源
 田中角栄らの議員立法で作られた。昭和20年代後半、貧困な状況にあった道路を迅速に整備する必要性があり、財源の確保が問題となった。「国道一号線は砂利道だった」
1953年(昭和28年)に田中角栄議員らの議員立法により、「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」がつくられ、「揮発油税」が道路特定財源となった。
 同法は、1958年(昭和33年)に「道路整備緊急措置法」となった。
 その後、1970年から始まる第6次道路整備五ヵ年計画に約3000億円の財源不足が予想されたため、自民党幹事長(当時)の田中角栄が「自動車新税」構想を打ち上げ、自動車重量税を創設した。自動車重量税は法律上は特定財源であることを明示していないが、制定時の国会審議において運用上特定財源とすることとされた。
 道路特定財源制度は田中角栄、その後継である竹下派(後の小渕派・橋本派)をはじめとした「道路族」が予算配分に強い影響力を行使してきた。

  • 1949年(昭和24年) 揮発油税創設(正しくは復活)
  • 1953年 道路整備費の財源等に関する臨時措置法制定
  • 1954年 揮発油税が道路特定財源となる。第一次道路整備五箇年計画開始。
  • 1958年 「道路整備緊急措置法」。第2次道路整備五ヵ年計画。道路整備特別会計創設。
  • 1966年 石油ガス税創設
  • 1968年 自動車取得税創設
  • 1971年 自動車重量税創設
  • 1993年 軽油引取税・揮発油税の税率引き上げ及び地方道路税の税率引き下げ(結果としてガソリン税としては増減なし)
  • 1997年12月25日 旧国鉄債務処理に道路特定財源の活用見送り(閣議決定)
  • 2003年度 使途拡大始まる。本四公団の有利子債務を切り離し、道路整備特別会計ではなく一般会計で処理する方針(自動車重量税を充当)。5年間の予定。
  • 2005年12月 政府「道路特定財源の見直しに関する基本方針」。 一般財源化を前提に、2006年度の改革の議論において具体案を得ることとしている。
  • 2006年度中 本四公団の債務処理が終了の見込み。

■税制
* 揮発油税   税率48.6円/リットル(暫定、本則は24.3円/リットル)
* 地方道路税  税率5.2円/リットル(暫定、本則は4.4円)
o 揮発油税と併課
* 石油ガス税  税率17.5円/kg(本則)
* 自動車重量税 自家用乗用車の場合、税率6300円/0.5t・年(暫定、本則2500円)
* 軽油引取税  税率32.1円/リットル(暫定、本則は15.0円)
* 自動車取得税 自家用の場合、税率 取得価格の5%(暫定、本則は同3%)
1974年度から2年間の「暫定措置」として実施された揮発油税、地方道路税、自動車取得税、自動車重量税の税率引き上げ(軽油引取税は昭和51年から)が期間延長を重ねているものである。以降、「暫定」税率は租税特別措置法を期間延長改正で続けられている。但し、2007年度末には期限切れ。

* 揮発油税     2兆8395億円
* 石油ガス税       132億円
* 自動車重量税     5549億円
      o 国分小計  3兆4076億円
* 地方道路譲与税    3072億円
* 石油ガス譲与税     140億円
* 自動車重量譲与税   3599億円
* 軽油引取税   1兆0360億円
* 自動車取得税    4855億円
      o 地方分小計 2兆2026億円
* 計 5兆6102億円(平成19年度当初予算案・地方財政計画案ベース)

ちなみに自動車税は1兆7477億円 軽自動車税は1636億円である(平成19年度地方財政計画案ベース)

■使途
* 道路整備等       2兆0814億円
* 地方道路整備臨時交付金   7099億円
* 使途拡大分        2878億円
* 18年度補正        1480億円
* 一般財源化        1806億円
       計  3兆4076億円 (平成19年度)

■租特の問題点
①租特法の創設は1957年。景気や財政状況などに即応するための時限的な税制だ。第1条には「当分の間、所得税、法人税・・・(ほとんどの税法が列挙)・・を減免するための措置」と記されている。減免措置は省エネや公害防止、不況対策など法人税に関する項目が多い。所得税関連でも住宅買換特例や老人マル優制度など国民生活に身近な項目もある。六法全書を紐解くと、法人税のページ数より、租特法の法人税に関するページの方が多いことに気付くはずだ。法人税を読んでも現在の法人税の体系などは分からないほどに法人税法が租特法によって歪められている。
②本来は税金を「軽減」するための法律であるにもかかわらず「増税」にも多く使われている。もっと問題なのは「軽減」の方はちゃんと「当分の間」で終わっているのに、「増税」の方はほとんどが長期化しているということだ。ガソリン税のほかに、軽油取引税、自動車重量税、自動車取得税などなぜか自動車と石油関連が多い。税金が足りない時には「取りやすいところから」というのが政府の常套手段で、最初は「当面の間」のつもりがいつのまにか「税収に不可欠な税率」と化しているのである。
③「当分の間」の意味について聞いた。だれに聞いても学問的定義は「5年、長くて10年が定説」だった。また「ガソリン税や自動車重量税など道路建設の特定財源として定着しているものは、本則のガソリン税法などを改正するのが本来の税制のあり方」との説明もあった。にもかかわらず自民党では「当分の間は未来永劫」という認識だった。
④法人税関連では、業界ごとに特例措置や軽減措置が星のかずほどあり、その軽減措置が2、3年の暫定期限となっていることが多い。このため、産業界は軽減措置の期限が近づくたびに「延長を求めて」永田町への陳情を繰り返さざるをえない。自民党への業界の”貢献度”が試される先生方にとっておいしい季節なのだ。業界が、減税措置の延長を求めるたびに「そのたびごとにあいさつが必要」(石油業界幹部)となる。大蔵省の若手官僚でさえ「”電話帳”は族議員の小遣い帳みたいなものだ」と漏らす。租特法の多用が政治と業界の癒着の温床になりやすいとの指摘は根拠がないものではない。
⑤財源を確保するのが目的の官僚にとって、租特法の強みはアメ(減税)とムチ(増税)がひとつの法案で国会に提出される点だ。ガソリン税増税も環境対策への減税も同時に議論されるため、どうしても増税反対の矛先が鈍りがちになる。