長崎新聞を読んでいて「オッ」と思わせる記事に出会った。見出しは「省エネタンカー進水式 佐世保・前畑造船所」。読んでいくと「電気機関」という見慣れない言葉が出てきた。ひょっとして「モーターで推進する船ではないか」と考えた。
 早速、製造した前畑造船に電話を入れた。
「電気機関っていうのはモーターのことですか」
「そうです。400KWの二つのモーターでスクリューを回します」
「電気はどうするのですか」
「タービンエンジンで発電します」
「船の中でわざわざ発電してモーターを回すメリットはなんですか」
「まずモーターの方が効率がいいので10%の省エネになります」
 ははーん。これは”ハイブリッド船”なのだと合点した。大型の船舶にまで大きな変革がもたらされているのだという感慨があった。
 前畑造船によると、メリットは省エネのほかにも多くあるのだという。まずエンジンルームが格段に小さくてすむため、その分多くの貨物を積むことができ る。国内の海を運航する内航船の場合、799トンを超えて999トンまではさらに2人の船員を乗船させなければならないという規定があるため、運航費が年 間2000万円程度軽減される。海運業界にとっては大きなメリットとなる。もちろん省エネによる二酸化炭素の排出量も大幅に減少する。
 船価は現時点では2割程度高くなるが、同規模の補助金が出るため船主の負担は増えない。技術革新でコストダウンが実現すれば造船コストも格段に低下する可能性がある。「これは一石三鳥ではないですか」と問うたら「まさにそうです」と弾んだ声が電話越しに返ってきた。
 実は国交省を中心に数年前から「スーパーエコシップ(次世代内航船)の研究開発プロジェクト」が始まり、スーパーエコシップ技術研究組合(理事長 矢吹 捷一 三井造船常務取締役)による実海域実証実験が始まっていた。前畑造船で11日進水したタンカーはその第一号だったのだ。
 それなら、メディア各社ももっと大きく報道してもよかったのにと考えさせられた。造船会社側の広報がへたなのか、それとも中小造船会社のニュースという ことで、メディア側が「たいしたことはない」と軽視したのか。どちらとも当たっているのではないかと思っている。それにしても「電気機関」という表現は ニュースリリースに書いてあったとしても、果たして読者の目を引くのでしょうか。(紫竹庵人)