アジアの有力企業は東京証券取引所についてどう考えているのだろうか。香港、シンガポール、タイ、韓国、中国、マレーシアの企業を対象にアンケート調査を実施した(回答企業22社)としたのはところ、「東証への早期上場を計画している企業は韓国の装具お勝者、大宇だけだった。もちろんまったく関心がないわけではなく、上場を「希望」または「興味がある」としたのは半数の11社あったが、大半は具体的上場計画を持っているわけではない。
 母国以外での上場は、ニューヨーク3社、ロンドン、香港、ルクセンブルグが各2社、インドネシアが1社。もちろん東証はゼロだ。今後海外市場への上場を希望しているのは韓国の浦項総合製鉄など10社。その希望先(複数回答)は、ニューヨークが6社。ロンドン5社、東京4社、クアラルンプール、シンガポール、NASDAQ(米店頭市場)各2社、マニラ、台湾、上海、深圳1社で、欧米市場優先の姿勢がうかがえる。
 タイのコンピューター・通信会社シナワトラ・コンピューター・アンド・コミュニケーションの場合、希望上場先は①NASDAQ②ニューヨーク③シンガポール④東京の順で、東京の順位はシンガポールの次となる。同様に韓国の起亜自動車も①ニューヨーク②ロンドン③東京、と欧米市場重視が際立っている。
 それにしてもなぜ東証上場希望が少ないのか、鍵を握る回答は言語にあった。東証に対する改善に関する質問に対して「英語での情報開示」を求めた企業が半数近くの10社もあった。このほか「上場費用または上場維持費用の引き下げ」(5社)、「有価証券取引税の撤廃」(同)などが挙げられたが、アジア企業は英語には慣れていても、日本語での有価証券報告者の作成などが相当負担になっていることを裏付けている。
 東証は、上場基準の緩和で上場後のディスクロージャーについても株主に送付する年次報告書については現行の年次報告書の日本語要約版のほかに、「有価証券報告書記載事項を取りまとめたもので代替」または「有価証券報告書記載事項をまとめたものに、英語版の年次報告書を添付」の二つの方法を追加するなど日本語の負担をできるだけ小さくするよう努力しているが、」グローバル化が進む世界の証券市場の中で特殊言語である日本語がアジア企業の東京上場の大きな壁になっていることは否定できない。