輸人ビール、国産をのむ 4社寡占休制に風穴
安売り店からスーパー、コンビニ店、一般の酒販店でも目玉商品となっている輸入ビール。衝撃的な低価格が人気を呼び、ことしの国内シェア(占有率)は、昨年に比べ倍増の4%に迫る勢いだ。円高メリットを武器に、これまでメーカーが押さえできた市場を小売業に、さらに消費者に取り戻す試みともいえる安売り攻勢、横並び価格に安住してきた大手ビール4社の壁を突き崩せるか。
ダイエーは昨年暮れ「価格破壊」の先陣を切って、ベルギー産バーゲンブロイ(330ミリ缶138円)の販売を始めたが「年間販売量見込みは当初の7万箱(一箱は24本入り)から100万箱、さらに猛暑で200万箱に迫る勢い」と中内功会長兼社長も予想以上の人気にすっかりご満悦だ。品切れ続出で7月には新たに138円の米国産ビールを投人した。
コンビニ最大手のセブン・イレブン・ジャパンが十二日から百七十八円で発売した米ミラー社のアイスビールも「スーパードライなど国産人気商品の3-4倍の売れ行き」」でヒットしている。
流通業界以外でも輸入ビールを手掛けるところが出始めた。肉の卸小売会社の花正(本社東京都江戸川区)は7月から、125円で各種欧米産缶ビールの販売を始めたが「爆発的に売れて品切れ状熊。輸入品の種類を倍増の20種類くらいに増やしたい」(小野博社長)という。
輸入ビールの安売りが可能になったのは「まさに神風もいえる円高のおかげ」(小野社長)だ。
もともと、欧米ではアルミ缶を含めて日本よりも製造原価が安い。これに円高による値下がり分を加えると、欧米の2-8倍と高い日本の酒税(350ミリ缶で77円70銭)を払っても「スーパーなどが大量発注すれば125円程度なら利益は出る」という。
輸入ビールの安値攻勢は国産にもじわじわ浸透。郊外型の安売り店では、国産ビール24缶入りの箱売りは4000円的後、1缶165円前後、まで下がるなど、国内大手ビール4社の寡占体制に風穴があいた形だ。
4社側は「日本の消賢者は味にうるさい。大味の海外のビールが口に合うかどうか」(瀬戸雄三アサヒビール社長)と強調、外国産米同様、拒否反応を示すことに期待をつなぐ。安売りについても「あくまで小売業界内の問題で、メーカーには無縁」と今のところ一見平静を装っている。
しかし、輸入ビールのシエアは昨年は1.7%だったが、今年に入ってからは3.2-4.0%に急増しつつある、との業界試算も。外国製が6%を占める乗用車を追い越し、同じし好品の外国たばこの18%に追るという予想もあり、それほど穏やかではいられないはず。
輸入ビールか国産か、熱い戦いの勝敗を左右するのは最後は愛飲家の舌である。(1994年7月25日共同通信)