第12回統一地方選挙のスタートとなる13の都道府県知事選の告示も間近になりました。4年前の前回の統一地方選挙は売上税の国会審議の最中に行なわれ、自民党が道府県議選や市町村議選で大きく議席を失いました。湾岸幟争に対する日本の貢献策やコメ市場開放を迫られるなど激動する世界政治経済のなかで、自民党が前回失った党勢をどこまで回復できるかが焦点となっています。また東京への一極集中に歯止めをかけ、地方の暮らしを豊かにするため、候補者が有権者に対してどのような新施策を提示できるかも興味あるところでしょう。
 知事選の天王山は都知事選
 統一地方選の投票日は、「4月21日」の前半戦と「4月21日」の後半戦に分かれます。前半戦は東京都など13の都道府県知事選と都道府県議選が中心で、後半戦は浦和や松山など9市の県庁所在地を含む市長選と市議選。町村長選と町村議選が、さらに東京都では区長選、区議選も実施されます。
 このところの地方選挙の特徴は中央直結の政党が前面に出る選挙は少なくなり。生活密着型の候補者が増えてきていることでしょう。選挙公約も土地・住宅問題や環境といった身近な問題を訴える傾向が年々強まっています。
 統一地方選の天王山といえるのはやはり東京部知事選ということができましょう。自民党東京都連が推す鈴木俊一都知事と自公民が推す磯村尚徳元NHK特別主幹の一騎討ちに加えて、スポーツ平和党のアントニオ猪木氏が急遽出馬を表明しています。社会党はいまだ(2月20日現在)に候補者を決めかねています。
 福岡県知事選は保守系の前総務審議官の重富吉之助氏と前福岡市議会議長の山崎広太郎氏が現職の奥田八二知事に挑戦、三つ巴の戦いとの報道がなされています。
 道府県議会選は、東京、茨城、沖縄を除く44の道府県で実施されます。2月14目時点で定数2693人に対して3667人の立候補者が予定されています。
 自民党はほ保守乱立を防ぐため人選を絞り前回を100人下回る1678人を擁立、社会党は議席の3倍増を目指して前回の480人を大幅に上回る564人を立候補させる方針です。公明党、民社党はいずれも候補者を抑制する考えのようです。
 前回、大きく躍進した女性議員は今回は立候補者も180人から142人へと減少、とくに保守系の女性候補者が少なくなっているのは残念です。
 国際化迎える地方政治
 90年代の地方政治はこれまでの一極集中への反省から大きく変わろうとしています。都市部での地価高騰によって若者の地方へのUターン現象にも拍車がかかっていますし、地方政治の若返りや女性進出で中央直結からの脱却も図られつつあります。地方の独自色を出した一村一品運動の展開だけでなく、目を外に向けた動きも出始めています。
 地方空港への国際線乗り入れによって直接外国との人材交流も容易になりました。たとえば九州ではアジアとめ経済交流が拡大、埼玉県や宮城県などでも県レベルで中国から研修生を受け入れる制度を導入しています。日本海岸自治体では、ソ連極東や朝鮮半島を含めた環日本海経済圏の構築といった独自の経済外交活動も活発化しています。国際化も90年代の地方の生き方を問うキーワードです。
 地方財政は47都道府県とその市町村の一般会計予算の合計はは約70兆円。国の平成2年度予算60兆円を上回る規模です。県あたり1兆円を超える巨大な金額となっています。大きな自治体では世界の中規模国の国家予算にも匹敵する大きさであることを認識する必要があるでしょう。日本が世界での貢献を求められていると同様に、地方でも独自のアイデアで国際社会に貢献できる時代となっているのです。
 もちろん政党選挙であるかぎり、統一地方選挙では国政レベルの問題も大きくからんできます。しかし地方からの国際貢献という視点から今回の統一地方選挙にのぞめば興味も倍増しましょう。(共同通信・伴武澄)