ダボスで語られる世界大再編の第2幕
執筆者:園田 義明【萬晩報通信員】
1月27日から2月1日まで世界経済フォーラム(The World Economic Forum)の年次総会、通称ダボス会議がスイスで開催されている。米国からはクリントン大統領、オルブライト国務長官、サマーズ財務長官、デーリー商務長官、リチャードソンエネルギ-長官、パシェフスキー通商代表などが参加。産業界からもビル・ゲイツはじめAOL、バイアコム、オラクル、ソニーなどのトップが一同に集まる。
こうした中、昨年の年次総会においてWTOシアトル会議の前哨戦ともいうべきグローバル化への疑問を投げかけたマハティ-ル首相が急きょ出席を取りやめている。すでにWTO同様総会会場の窓ガラスがこわされるなどの事件が発生しているようだ。
今年はグローバル化、情報通信技術、遺伝子分野などを中心に論議が行われる予定であるが、この中でついにEMIまでも巻き込んだAOLタイム・ワーナー誕生劇に触発された情報通信分野における新たなる再編第2幕に注目が集まる。特にマイクロソフト、ソニー、そしてドイツメディア大手ベルテルスマンなどはすでに提携先の絞り込みを始めているかもしれない。
ベルテルスマンのCEOトマス・ミッデルホフはみずからAOLの取締役会に外部取締役として参画しヨーロッパにおけるAOLのパートナーとして提携を推進してきたが、タイム・ワーナーとの合併で辞任を示唆している。ベルテルスマン傘下のアメリカ大手出版社ランダムハウスとのライバル関係がその原因である。
ベルテルスマンはまた傘下にホイットニー・ヒュ-ストン、ケニー・Gなどが所属するベルテルスマン・ミュージック・グループを有しており、この点でも提携解消は決定的となる。ドイツ銀行との取締役兼任結合関係を利用し再編の核となるはずだ。
ドイツ銀行傘下のモルガン・グレンフェル、バンカーズ・トラスト(旧J・Pモルガン商会)のM&A部隊の腕の見せどころであろう。モルガングループと関係の深いソニーも当然候補にあがっているものと思われる。ソニー・ミュージック・エンターテイメントと音楽分野での事業統合が実現すればワーナー・EMIを上まわる世界最大の規模となる。ソニーにとっても携帯情報端末事業への効果を考えれば決して悪い話ではないはずだが・・・。
アメリカ西海岸を中心に活躍したイーグルスの代表アルバム「ホテル・カリフォルニア」から引用しよう。
The Last Resort
何が君のもので 何が僕のものなのか
その大いなる設計を規定するものは誰なのか?
今や ニュー・フロンティアなど存在しない
僕達がここで創りださなければならないはずだ
だけど 人々は限りない欲望を満たしつづけ
残虐な行為すら正当化しようとしている
「運命」という名のもとに
そして「神」という名のもとに・・・
彼等はそこを楽園と呼ぶ
僕にはなぜだかわからない
もし あそこが真の楽園なら
僕はキスして さよならをいおう
タイトル曲『Hotel California』のspiritを日本語訳ではワインとしているが、スピリット(精神)と訳せばこうなる。『当ホテルではそのスピリットを69年から切らしています』。今夜は深酒かな。(2000.01.26 そのだ・よしあき)
園田さんは東京在住のサラリーマン。国際戦略コラムでもコラムを書いています。
園田さんにメールはyoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp