【補足】ボヘミアン・グローブとマンハッタン・プロジェクト
執筆者:園田 義明【萬晩報通信員】
『1941年(昭和16年)7月のキャンプでは、日本に対する経済封鎖の強化と、日本と戦っている重慶政府(中華民国)への”軍事支援”が語られ、一方、広島・長崎への原爆投下の”因”となった「マンハッタン計画」が議論されている。』
(「日本の錯覚 アメリカの誤解」 高橋正武著 P109より)
このボヘミアン・グローブとマンハッタン・プロジェクトの関係は、クラブ・メンバーにとって誇りともなっており、しばしばメンバー自身の口から語られるようだ。しかし、その真相は明らかにされていない。
マンハッタン・プロジェクトが発足したのが1942年8月、そしてその一ヶ月後の1942年9月13日と14日にボヘミアン・グローブのクラブハウスでマンハッタン・プロジェクトのミーティングが行われたことは、ボヘミアン・クラブ・ライブラリー・ノーツに記されている。出席者は下記のとおりである。
☆アーネスト・O・ローレンス ※
カリフォルニア大学バークレー校ラディエーション・ラボラトリー所長
☆ドナルド・クックシー
カリフォルニア大学バークレー校ラディエーション・ラボラトリー
☆ロバート・J・ソーントン
カリフォルニア大学バークレー校ラディエーション・ラボラトリー
☆J・ロバート・オッペンハイマー ※
カリフォルニア大学バークレー校物理学部
☆ジェームス・B・コナント ※
ハーバード大学学長
☆ライマン・ブリッグス ※
商務省標準局(NBS)局長
☆イーガー・V・マーフリー ※
化学者、スタンダード・オイル取締役
☆アーサー・H・コンプトン ※
シカゴ大学物理学部学部長 ゼネラル・エレクトリック・コンサルタント
☆ケネス・D・ニコルス陸軍中佐 ※
☆トーマス・クレンショー陸軍少佐
(※ マンハッタン・プロジェクトの主要メンバー)
(BohemianClubLibrarynotes#71960より)
このメンバーの中でボヘミアン・クラブを積極的に活用したスパイダーマンはアーネスト・O・ローレンスである。ローレンスはミネソタ大学とシカゴ大学などに学び、1936年からカリフォルニア大学のバークレー校のラディエーション・ラボラトリーの所長を務め、電子核研究のための装置としてサイクロトロンの理論を提出、そして1932年にその装置を完成した。1939年にはノーベル物理学賞を受賞する。
第二次世界大戦が始まると、ローレンスは原子爆弾の研究に従事し、大型電磁石を用いてウラン?238から原子爆弾に用いるウラン?235を分離して原子爆弾の製造に貢献した。
ボヘミアン・グローブの名簿で興味深い点は、マンハッタン・プロジェクトの科学者組織では最高の権威を持っていた4名から成る政府の科学者顧問委員会のエンリコ・フェルミを除く3名(ローレンス、オッペンハイマー、コンプトン)が顔を揃えている点であろう。
また戦後も米国の核開発を支えたローレンス・リヴァモア研究所の共同創設者ローレンス(もうひとりの創設者はエドワード・テラー)とロス・アラモス研究所の初代所長J・ロバート・オッペンハイマー(原爆の父)のふたりの組み合わせも注目される。
ヴァネヴァー・ブッシュ国防調査委員会(NRDC)委員長、ヘンリー・ウォレス副大統領、ヘンリー・スティムソン戦争省長官等で構成された最高政策グループ(トップ・ポリシー・グループ)のメンバーであったジェームス・B・コナントが出席している点からもこのミーティングの重要性が理解できる。
陸軍からはケネス・D・ニコルス陸軍中佐の名が記されているが、ニコルスは、レスリー・R・グローブスの側近中の側近であり、後に原子力エネルギー委員会(AEC)のゼネラル・マネージャーに抜擢された人物である。
産業界からはスタンダード・オイル・ニュージャージー(その後エクソン?エクソン・モービル)の社長であったイーガー・V・マーフリーが参加しているが、マーフリーは遠心分離装置の発展とエンジニアリング問題を担当しておりローレンスと緊密に連絡を取り合っていたようだ。
1927年にコンプトン効果でノーベル物理学賞を受賞したアーサー・H・コンプトンはゼネラル・エレクトリック(GE)のコンサルタントを勤めていたが、ローレンスもGEのコンサルタントやモンサントの取締役を務め、ヴァネヴァー・ブッシュもGE出身である。
核ビジネスの可能性にかける男達の想いは、この時すでにライマン・ブリッグス商務省標準局(NBS)局長が加わっている点からも推しはかることができる。
当時の財界奥の院(インナー・サークル)の中心人物”エレクトリック・チャーリー”ことチャールズ・E・ウィルソンGE社長は、1942年9月にワシントンに呼び出され戦時生産局(WPB)の副長官に起用される。従って、この時のボヘミアン・グローブでのミーティングの影の主催者はGEである。
このGEと関係の深い研究機関としてSRI・インターナショナルがある。SRI・インターナショナルは1946年にスタンフォード大学付属の研究所スタンフォード・リサーチ・インスチテュート(SRI)として発足し、1970年に大学から分離独立した。カリフォルニア州メンロパーク市に拠点を構えており、スタンフォード大学と共に現在でもボヘミアン・クラブとの関係は密接である(マイケル・H・アーマコスト、ジョージ・P・シュルツ、ライリー・P・ベクテル、小林陽太郎経歴参照)。
このSRI・インターナショナルの現在の会長サミュエル・H・アーマコストはマイケル・H・アーマコスト元駐日米国大使の実弟である。サミュエルも石油メジャーであるシェブロン・テキサコ、メリル・リンチ、デルモンテの取締役を兼任し、東芝の諮問委員会のメンバーを務めている。また有力経済団体ビジネス・カウンシルとビジネス・ラウンドテーブルのメンバーであり、ボヘミアン・クラブとパシフィック・ユニオン・クラブの会員となっている。
GEは1905年に東京電気に電球製造のライセンスを付与し、1910年には芝浦製作所の株式を取得する。1938年に東京電気と芝浦製作所が合併し東京芝浦電気(現東芝)が誕生するが、1989年まで出資関係を継続した。GEと東芝の提携関係は原子力発電分野に代表され、ウェスチング・ハウス=三菱連合とともに日本のエネルギー政策を支え続けてきた。従ってアーマコスト兄弟とボヘミアン・クラブの影響力は米国内にとどまらず日本の根幹まで及んでいることがわかる。
ボヘミアン・クラブの核ビジネスのおける伝統は、マンダレー・ロッジに集うベクテル・グループ(原子力プラント)、フリーポート・マクモラン・カッパー・ゴールド(ウラン採掘)、米国ウラン濃縮会社(USEC)、パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(PG&E、原子力発電)の幹部達によって現在に引き継がれている。
ボヘミアン・グローブにそびえ立つレッドウッドの木々達は、遙か彼方にいる原爆をも抱きしめてしまった我々を複雑な想いでみつめていることだろう。
□引用・参考
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/qid=1062317759/sr=1-3/ref=sr_1_0_3/250-9008539-2807433
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