【トビリシに来たニーナ10】ヒンカリ
執筆者:兵頭 ニーナ【ギターボーカリスト】
グルジアに来る前にネットで知り合ったやぶ蚊さんこと渡辺さんにやっとの事で立ち上げたPCから「トビリシに着いてます」とメールした。
すぐに返信が来て翌日にはアパートの下のイタリアンカフェでお会いして自己紹介。去年結婚して今、生まれて2ヶ月の赤ちゃんがいると話して下さった。ぜひ奥様にもお会いしたいなー赤ちゃんも見たいなーと思ってたら突然!「ヒンカリはもう食べましたか?」とやぶ蚊さん。
グルジアにきて2週間も過ぎ、色々食べたけどヒンカリは知らなかった。
「ヒンカリって何ですか?」
「しょうろんぽうみたいなものですね。僕のアパートの近くにおいしい店があるんですよ。下町ですけど・・・・」
「ぜひ、行って見たいです」
早速マルシュートゥカ(乗合マイクロバス)に乗ってマルジャニシュヴィリまで出かけた。15分くらいかな。浅草か御徒町みたいに雑多な店が建ち並びなんだか私の気をそそる。私はやっぱり下町が好きなのかも知れない。時間はちょうど夕食どき。
ここですけどとドアーを開けるとそこはまさに「下町の食堂」で10個くらいのテーブルは、ほぼ男たちでいっぱいだった。
「どうして女性はいないんでしょうね?」
「まあ、こういう所は男達のたまり場ですから殆ど女性はいないですね。グルジアの女性は強いからなー」
「フムフム、なるほどね」
運良く空いてたテーブルに席を取るとやぶ蚊さんがヒンカリ10個と一番おいしいといわれてるビールをジョッキで頼んで下さった。ビールは麦っぽくて日本の銀河高原ビールに似ていた。やがてお皿に山盛りで出てきたヒンカリはまさにしょうろんぽうの大きいやつで「熱い汁が飛び出るから少し冷めてからかぶりついてください」と教えられた。
袋状にねじられたところを手で持って恐る恐る食べて見る。
「うーん、味付けも東洋風・・・むしゃむしゃ・・・おいしいですねー・・むしゃむしゃ・・・シルクロードですねー」
「そうですねーむしゃむしゃ・・グビッ!」
ジョッキ一杯のビールとヒンカリ4個でお腹がいっぱいになった。家庭ではあまったヒンカリは次回フライパンでじっくりと焦げ目をつけてあたためて食べるそうだ。となると餃子だな・・とタレの事を思い出した。
「グルジア人は外国の人と見ると、ご馳走したがるやからが出てきますが僕がうまく断りますからね。一度受けると止まりませんので・・・・」なんて言ってる内に早速、横のテーブルからお声がかかった。やぶ蚊さんがグルジア語で何とか断ってるのを聞いて頃合いを見て立ち上がった。
今日はやぶ蚊さんお奨めのおいしいヒンカリに出会えて幸せだった。ついでにアパートにもお寄りして奥様にもご挨拶、可愛い赤ちゃんの顔も見て帰路についた。
一人で乗るマルシュートゥカは自信が無かったが、やぶ蚊さんが運転手さんに降り場所を言っておいて下さったので助かった。ヴァケ区はお金持ちの街と見られていて結構物騒だと聞いていたのでバスを降りてほんの2,3分、せいいっぱいあたりに気をくばりアパートの階段を駆け上がった。夕方から夜にかけての一人の外出は初めてだったから私よりもむしろヴィカの方が心配だったに違いない。
二重鍵を開けてもらいドアーの向こうにお互いの顔を見てやっとほっとした。
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