執筆者:伴 武澄【萬晩報主宰】

きのう「総選挙の真の対立軸は小泉vs亀井」というコラムを書いた。そうなると岡田民主党は本当の敵を間違えているということになる。いま敵対すべきは小泉自民党ではない。民主党が改革政党を名乗るなら、自民党内の抵抗勢力こそが民主党の真の敵なのだということを知るべきである。

いま小泉自民党を敵に回すということは民主党が目指す理想と逆行することになる。多くの有権者が民主党に風を送らないのはそういうことではないかと思っている。

小泉首相がきょうの街頭演説で強調したのは「本来は野党が言うべきことを与党の私が言っている。逆ではないのか」。そこまで言われているのに小泉改革の批判ばかりに徹していたのでは岡田さんは支持を得られない。

今回の総選挙で岡田さんが犯した最大の間違いは「政権を取れなければ退陣する」と退路を断ったことである。小泉首相のまねをする必要はさらさらない。先に宣言したのならともかく、二番せんじの「退路を断つ」公約では迫力はないからだ。

岡田民主党に期待するのは筆者だけではない。しかしこの時点で改革の足を引っ張る国内の勢力に引導を渡したのは小泉純一郎だった。

言いにくいことだが、岡田さんはまだ民主党の中でそこまでの勇気を持っていない。もしこの時点で小泉首相に張り合うなら「退路を断つ公約」ではなく、官公労と縁を切る宣言が不可欠だ。小泉首相は自民党の長年の支持基盤である特定郵便局に絶縁状をたたきつけたのだから、岡田さんはそれ以上の勇気が必要なのだ。

有権者の多くはそこのところはしっかりと見抜いているはずだ。だからといって岡田さんに完全に失望しているわけでもないし、改革政党としての民主党を見限っているわけでもない。

多分多くの改革支援者たちは小泉さんの次に岡田さんに期待しているはずなのだ。そこのところを見間違えてもらいたくない。いまからでも遅くはないと思う。岡田さんは小泉改革にエールを送って次を狙ってほしい。小泉首相は来年の9月には「退陣する」と何度も公約している。本音で語れば、民主党内部からも本当の岡田支持者が増えてくる。

岡田さん、もう建前の論戦はやめましょうや。広島6区の選挙民は困っているはずだ。改革志向の選挙民は民主党の佐藤公治と無所属で小泉首相推す堀江貴文に票が割れて亀井静香が漁夫の利を得ることに頭を悩ませているはずだ。

岡田民主党が公示後のいまできることは「小泉ほめ殺し」しかない。郵政民営化を認めた上で、「われわれも特別国会で郵政民営化法案を出す。どちらがよりいい民営化をできるか勝負しましょう」ぐらいのことをぜひ言ってほしい。

そうなれば、この総選挙は完ぺきな対立軸が生まれ、選挙戦はがぜん白熱するはずだ。どうだろうか。