執筆者:伴 武澄【萬晩報主宰】

きょうは公示日。いよいよ総選挙の幕が切って落とされた。小泉自民党は郵政民営化の実現を掲げ、岡田民主党は政権交代を求めている。表面的には二大政党の激突時代を迎える様相を呈しているが、何か違うと感じている有権者も少なくない。

昨夜、支局の仲間と話していて気付いたことをきょうは報告したい。

「今回の選挙は自民と民主が対決しているけど、本当に二大政党が対決しているのだろうか」

「民主党は確かに自民党から政権を奪う戦いをしているが、小泉自民党の敵は実は民主党ではないんじゃないかと思う」

「俺もそう思う。小泉自民党の本当の敵は亀井静香を筆頭とする党内の抵抗勢力なんだよ」

「第二次大戦時の中国みたいだ。?介石政権は日本と戦争しているつもりだったが、当の日本はアメリカと戦争をしていた」

「そうそう。いい比喩だね。社民の福島瑞穂が言っている通り、岡田民主党と小泉自民党の主張はそう変わらない。実は自民党内の価値観の対立の方がよっぽど深刻なんだ」

「まさに自民党内の抗争こそが解散総選挙の引き金になっているという現実をもっとマスコミは報道しなければならないのだよ」

小泉自民党の今回の郵政民営化騒動を振り返ると、中国で1950年代に起きた百家斉放運動を思い出さざるを得ない。毛沢東は革命遂行にあたって「内部矛盾」という問題をことのほか重視した。『矛盾論』という“名著”もある。

革命の進め方について広く知識人たちに意見を求め、その中から「内部矛盾」と「敵性矛盾」をえり分け、敵性矛盾にレッテルを貼り、それらに総攻撃を加えるという手法である。小泉自民党はまさに50年近く前の中国共産党の奪権闘争に重なる。

自民党のマニフェストが言うように郵政民営化を実現することで、規制緩和を含め多くの構造改革が進展する素地が生まれそうな気配だ。

小泉首相にとって郵政民営化問題は目的ではなく、抵抗勢力を自民党から切り離す手法の一つだったのだ。そういう目で今回の総選挙を見ると小泉自民党の主戦場は民主党との全面対決ではなく、広島6区であり、東京10区なのだということが分かる。この時点で自民党内の抵抗勢力を一挙に排除できれば「勝った」とほくそえむのだろうと思う。

自民党が自民党であり得たのは、まず政権の座にいて、官界と財界と鉄のトライアングルを組んで、利権の采配者として君臨していたからだった。小泉首相の第一の功績はその利権の中核派閥だった橋本派を崩壊に導いたことである。

派閥を牛耳った野中広務は政界を引退し、参院自民党を率いた青木幹雄は郵政民営化法案の参院での否決で政治生命を失ったも同然。かつての首相だった中曽根康弘と宮沢喜一はすでにいないし、橋本龍太郎も政界を引退した。国民新党をつくった綿貫民輔は終わった人だし、堀内光雄や平沼赳夫が党内に確固たる力を持っているわけではない。これに亀井静香を排除すればもはや小泉の天下となる。

繰り返すようだが、今回の総選挙の最大の注目点は広島6区の亀井静香の当落ということになる。どうだろうか。