アメリカは金融危機がなくとも、二つの赤字に悩んでいた。財政と貿易である。財政はクリントン時代に一時的に黒字化したが、ブッシュ政権が「戦争」に突入 したため5000億ドルの赤字となっている。約50兆円だから、日本の2倍である。貿易赤字はアメリカ経済が物作りを放棄して金融に軸足を置いたときから 巨大化が始まった。
 その赤字を埋めてきたのは日本や中国の経常黒字だった。ところが原油価格の高騰で少なくとも日本の貿易構造が大きく転換している。貿易黒字が激減してい るのだ。アメリカの赤字の穴埋めをしてきた「原資」が枯渇するとどうなるか。それでなくともアメリカは金融安定化のためにさらに75兆円の財政支出を迫れ れている。
 ドルに対する貸し手がなくなれば、金利の暴騰は避けられない。アメリカはいつまでもドルを刷り続けることはできないはずだ。
 アメリカという国を理解するために興味深い本を読んだことがある。その本にアメリカのドル紙幣がどういう手順で発行されるか、書かれてあった。
 「1ドルは連邦準備制度に対する1ドルの負債をあらわしている。連邦準備銀行は無から通貨を創造し、合衆国財務省から政府債券を購入する。利子の付いた 流通資金を合衆国財務省に貸し出し、合衆国財務省に対する小切手貸付と帳簿に記帳するのである。財務省は10億ドルの利付債の記帳を行う。連邦準備銀行は 財務省に対して債券の代価の10億ドルの信用を与える。こうして10億ドルの債務を無から創造するのだが、それに対してアメリカ国民は利息を支払う義務を 負うことになるのである」
 現在のアメリカには通貨発行権を持ついくつもの連銀があり、その中で最大の銀行がニューヨーク連銀である。簡単に言えば、ドル紙幣はアメリカ政府が発行 する債券(国債) を担保にニューヨーク連銀が政府に貸し付けた債権証書なのである。その時の割引率(利子)が公定歩合となる。notes だとか bill、draftと呼ばれる理由が分かっていただけたかどうか。
 ドルの現在の担保はアメリカ政府が発行する債券つまり借金が担保なのだから不思議なことになっている。そしてこのニューヨーク連銀は欧米の銀行家が株式の100%を保有していて、アメリカ政府はただの1株も保有していない。日本銀行以上に「民間」なのだ。
 9月以降、為替相場は日々、乱高下している。国際金融資本による通貨の売り買いは当該国の本当の経済力を反映しているのか疑わしくなっている。円ドルで みると金融危機の発信源であるドルは暴落していて当たり前の姿を見せる。しかし、そのドルはユーロに対して異常な「高騰」をみせている。同じことが新興国 の通貨に対しても起こっている。地球的に見ると一番危機的なドルが日本に次いで買われているということなのだ。(伴武澄)