ヴォーリズに集まった兄弟たち(2)
近江兄弟社の英語表示は「Ohmi Brotherhood」である。学園の場合はその後に「Schools」が付く。「Brotherhood」の日本語訳には「友愛」もある。鳩山由紀夫氏は民主党の代表となった際に「友愛」と言った。初めて聞いた時は「軟弱」と感じた。明治天皇は御製の歌で「四海同胞」とうたった。 「Brotherhood」の意味を込めたものと考えているが、こちらの方がしっくりくる。
「兄弟」はどうだろうか。悪くない。「兄弟仁義」などという言葉もあるが、これは強すぎるかもしれない。「Brotherhood」はもともとが修道院 での集団生活から生まれたはずである。「助け合い」「互助」「共済」などの意味も含まれる。昔の日本でいえば「講」や「惣」といった概念がこれにあたるの かもしれない。
一方、「社」はどうだろうか。会社の「社」も本来は同源であろうが、坂本竜馬が長崎に設立した「亀山社中」の「社」はミッションを持つという意味合いで、まさに「兄弟社」に通じるものがある。「社」は「やしろ」である。神社は神々が集う「空間」や「場」の意味。
日本にはかつて「若衆宿」が各地にあった。特に漁村に多かった。15歳、つまり一人前になった証拠に「フンドシ」が与えられ、親元を離れて集団生活をし た。若衆宿での生活は結婚するまで続く。十代後半から二十代前半の若者がいわば「自治組織」をつくり、世代間の結束を固めるのだ。
意味を知らないと「近江兄弟社」ってなんだ、と考えがちだが、考えれば考えるほどいい響きに聞こえてくる。賀川豊彦のミッションに共感を持つ人々が11月28日、近江八幡に集ったこと、そのことが「近江兄弟社」なのだと一人合点した。
近江兄弟社はいまは、「財団」「学園」「株式会社」に分かれているが、戦後になって行政が縦割りにしただけで、本来は一体的に運営すべき「団体」なので ある。きのう12月1日から公益法人の新制度が始まった。近江兄弟社が設立された経緯を考えると、現在の公益法人の在り方が矛盾に満ちたものに見えて来る のだった。
-近江の兄弟ヴォーリズ(3) 賀川豊彦
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