3連休の最終日、山を下りて日帰りで神戸に行った。賀川記念館から賀川聖誕祭の記念講演会で講演して欲しいという依頼があったためだ。演題は「協同組合と国際平和」と題して、どうしてアジアで対立が続くのかというような話をした。講演の後、駅前で短時間ビールを飲みながら語り合った。アカデミーでは土作りばかりをしているのではない。かつてこの地にあった「夜学会」を英訳すれば、Night Academyだろう」と西さんが言い出した。なるほどガッテンだ。
 賀川豊彦は戦後、財団法人国際平和協会をつくり、平和日本の国づくりの拠点とした。機関誌「世界国家」は数万部発行されていただろうと推測される。全国に世界連邦運動の支部が立ち上がり、多くの自治体が世界連邦宣言をおこなった。今からは考えられないほど「世界連邦」への渇望が強まったのは日本だけではなかった。アメリカでもヨーロッパでも大きな社会的うねりが起きていた。
 ヨーロッパでは、現在の欧州連合(EU)につながる欧州石炭鉄鋼共同体が誕生し、ストラスブルグに欧州議会が生まれていた。賀川豊彦は「なぜアジアでできないか」ということを考え、広島の地に世界連邦アジア大会を誘致した。以下、当時の「世界国家」 (1952年7月号)からの抜粋を掲載する。

 世界連邦アジア会議の推進
 日本の敗戦によって、アジアに於ける八つの国が独立した。だが軍備的にいって、みな丸裸である。経済的に考えて、みな相当、苦しんでいる。
 ヨーロッパに、連邦議会が既に成立している如く、このアジアの丸裸の国々を連絡して、共栄共存の連邦議会を作ることは、世界平和のためにも、是非推進せらるべきものである。
 日本が軍備を持っていれば、アジアの諸国は、日本に付いて来ないだろう。日本が丸裸であるから、アジアの他の丸裸の国々も、日本を疑わないだろう。
 世界連邦の理想は高い、然しアジアが安定すれば、世界の安定は、更に容易になる。
  来る十一月三日から、広島で開催されんとするアジア会議は、民間外交の仕事としては、破天荒的な出来事である。我々はそれを成功させたい。然し、たとえそ れが十全に成功しなくとも、世界に与うる影響は絶大であることを考える時に、どんな小さい集会でもよい。我々は広島に於けるアジア会議を推進する必要があ る。
 もし、アジア会議の結論として、ルクセンブルグ国・ストラスブルグ市に中心を置くヨーロッパ議会の如きものが、アジアに於て結成さ れる緒口が見付けられるならば、アジアの幸福は大である。そしてアジア連邦が成立するなら、日本は、敗けたことによって、百六十万の戦死者の犠牲を新しい 意味に於て、民主的に生かすことになる。  (一九五二年七月号)